スプリンターズSと言えばダイタクヤマト。単勝200倍超えの大激走 (4ページ目)

  • 新山藍朗●文 text by Niiyama Airo
  • photo by Kyodo News

 そこに、最後の"風"が吹く――。

 この日の馬場はやや重で、湿り気を帯びた力のいる馬場だった。ダイタクヤマトはこういう馬場を得意としたが、後ろから追いかけてきた馬たちはその馬場に脚を取られて、普段の切れ味が影を潜めてしまったのだ。

 人気のアグネスワールドやブラックホークの馬券を買っていたファンは、思うようにスピードが上がってこない愛馬たちの姿を見て、さぞもどかしかったことだろう。その2頭は、坂を上がってからようやくスピードが乗り、鼻づらを合わせるようにしてゴールに飛び込んできた。

 が、時すでに遅し。その2頭の1馬身4分の1先に、ダイタクヤマトがいた。

 ダイタクヤマトにとって、いくつもの幸運が重なったのは事実だ。しかし、それはフロックでも、力のない馬がただ運に恵まれただけ、という勝利でもなかった。

 ダイタクヤマトはその後、GIIスワンS(京都・芝1400m)、GIII阪急杯(阪神・芝1200m)で優勝。翌年のスプリンターズSでも、勝ち馬とタイム差なしの3着と健闘している。

「地味な馬」ではなく、「大器晩成型の馬」だった。

 さて、今年のスプリンターズSは10月1日に開催される。奇しくも、ダイタクヤマトが勝った日と同じ日付である。

 今回も、GI実績のある有力馬が顔をそろえるが、思わぬ伏兵馬の台頭があってもおかしくない。はたして歴史は再現されるのか、必見だ。

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