あの天皇賞へ。札幌記念で思い出す、ヘヴンリーロマンスの「ミラクル」 (3ページ目)

  • 新山藍朗●文 text by Niiyama Airo
  • photo by Kyodo News

 そして、次に挑んだのが、牡馬一線級も顔をそろえるGII札幌記念(札幌・芝2000m)だった。同レースは1997年にGIIに昇格して1カ月半ほど開催時期が遅くなり、GI天皇賞・秋(東京・芝2000m)の前哨戦といった意味合いも強くなって、多くの有力馬が集まるようになっていた。

 現に1997年以降の勝ち馬には、エアグルーヴをはじめ、セイウンスカイ、テイエムオーシャン、ファインモーションなど、GI覇者でもある、そうそうたる顔ぶれが名を連ねている。

 ヘヴンリーロマンスは、あまりの体調のよさから、急きょ連闘でこの一戦に挑むことにした。しかしながら、彼女の"激変"ぶりは多くのファンから見逃され、当日は14頭立ての9番人気にとどまった。休み明けでの前走の好走も、プラス体重が示す急激な体調の良化も考慮されなかったのである。

 そんな低評価の中、ヘヴンリーロマンスは道中、馬群の後方で淡々と追走。折り合いはピタリとついていた。3角過ぎあたりから騎手の手が動き始め、4角手前では先行馬群の直後となる絶好のポジションを取った。

 迎えた直線。内から4、5頭分の空いたスペースを突いて、先行馬群の外目から仕掛けた。脚勢は彼女が一番いい。豪快な末脚を繰り出して、1頭、また1頭とかわしていく。

 そこへ、最内からスルスルと伸びてくる馬がいた。これまた人気薄のファストタテヤマだ。最後はこの2頭が激しく叩き合って、そのままゴール板を通過した。

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