アラブの王族もお手上げ。競走馬セレクトセールはジャパンマネー強し (3ページ目)

  • 土屋真光●文・写真 text & photo by Tsuchiya Masamitsu


 事実、今年のセレクトセールでも2000万円前後を予算の上限と見ていた中小のオーナーが、大オーナーの1000万単位の入札攻撃の前になす術(すべ)なく瞬殺、というシーンが多く見られた。かつては、アドマイヤムーンやジャスタウェイのような、後の国際GI勝ち馬が1000万円台で購買できていたのが、今や難しくなってきたということだ。

 こうした状況に、「まったく買いたい馬が買えません」と困り顔を見せていたのが、今年も参加した前出のファハド殿下のチームだ。当初はディープインパクト産駒などを狙っていたようだが、カタールと聞いて思い浮かべるイメージとは裏腹に堅実な予算を組んでいたことから、まったく手が出ずに苦戦していたという。しかし、途中から、「血統がいい馬よりも、そこそこの血統で馬体のいい馬」(代理人談)という方向性に作戦変更すると、次々と落札に成功し、最終的に1歳馬2頭、当歳馬3頭を合計1億2600万円で購買した。この作戦変更の裏には、ファハド殿下自身による、入念な下見があった。特に当歳馬に関しては、当日の早朝からほぼ全馬に直接目を通し、その中から選んだのだという。これらの馬はすべて日本でデビューの予定とのこと。

 余談になるが、ファハド殿下は前回のセール参加時と比較して、半分ぐらいになったかと思えるほどシェイプアップ。現在はフルマラソンを走るほか、自身でもアマチュア騎手としてレースに騎乗しているという。3年前にこのセールから2億8千万円で購買したNew World Power(母リッスン)が、競走馬として大成が難しいと見るや、自分が騎乗する馬とし、実際にレースでも2着になったそうだ。日本ではなかなか考えにくいスケールの大きな話である。

 活況が続く日本の競走馬市場に対して、海外からの注目、関心はまだまだ静まりそうにない。

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