安田記念は難病を克服した驚異の生命力、グレーターロンドンに注目 (3ページ目)

  • 土屋真光●文 text by Tsuchiya Masamitsu  photo by Nikkansports


 蹄葉炎の治療は簡単ではない。患部に負担がかからないようにしながら、炎症によって悪くなった蹄の成長を促し、かつ根本となっている炎症とその原因を取り除かなくてはならない。焦らず、時間をゆっくりかけていかないと治癒しないのである。

「新しい蹄を伸ばすのには代謝を進ませることが必要ですが、代謝がよくなるとまた炎症も進んでしまうんです。消炎剤をどこで減らすか、脚元の様子を見てまた戻すか、一進一退でした。それでもいわきに行ってから、指動脈の張りも治まったようで、ここから光が見えてきました。

 しばらく一進一退を繰り返した昨年6月に、削蹄をしたところ、血のような崩壊した患部組織がドロッと出てきたんです。あっ、これが諸悪の根源だと。これをしっかり取り除きながら、15分くらいの運動から始めていきました」

 こうして回復の兆しとともに段階的に調教のピッチも上げられ、昨年11月12日の3歳以上500万下条件戦(東京・芝1600m)で1年ぶりに復帰。これを快勝し、連勝街道を進むこととなる。

「とはいえ、今でも気をつけないといけません。元々のきっかけとなった、左の蹄にピンポイントで傷みやすい部分があるんです。そこを傷めると、また右脚に負担がかかって......となってしまうんですね。また、ソエが今でも出ることがあります。ですので、復帰以降は『狙ったレースを使う』というのではなく、『候補を多く挙げておいて、状態のいいときに迷わず使う』という方針できています。前走の東風ステークスも、あまりにも状態がよかったので使ったものでした」

 その後、冒頭のようにダービー卿CT はパスすることとなったが、結果的に東風S後に不安が出たことで、安田記念には間に合わせることができた。ダービー卿CT後に同じような不安を見せていたら、このレースには使うことができなかったはずだ。

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