安田記念は難病を克服した驚異の生命力、グレーターロンドンに注目 (2ページ目)

  • 土屋真光●文 text by Tsuchiya Masamitsu  photo by Nikkansports


 大竹調教師が腐心するグレーターロンドンの蹄(ひづめ)は、3歳後半から1年間、蹄葉炎に冒されており、今でもその影響が残っている。

 蹄葉炎とは、簡単に言えば、蹄の内側の組織に炎症・崩壊を起こす症状で、重症化すると衰弱死に至ることもある。競走馬の場合は、骨折した脚をかばうことで、骨折した脚とは逆側の蹄に発症するケースが多く見られ、過去にこれによって命を落とした名馬も少なくない。

「グレーターロンドンも、いきなり蹄葉炎になったわけではないんですね」

 きっかけは小さなものだった。

「坂路の調整から戻ってきたときに、左の前脚を少し痛がる素振りを見せたので、最初は挫跖(ざせき、)かな? と思いました」
※石など硬いものを踏んだりして、蹄底におきる炎症、内出血。

 その違和感を覚えたのは、約7ヵ月ぶりに出走した3戦目の3歳以上500万下条件戦(2015年10月31日/東京・芝1800m)を快勝した2週間後のことだった。前走から間隔が空いたのは、山吹賞(2015年4月4日/中山・芝2200m)でレース中に右前脚を落鉄したのをきっかけに歩様が悪くなり、ソエの症状も悪化させて、北海道への放牧で立て直したからである。しかし、その症状とはまったく別のように思ったので、まずは様子を見たという。

「そのうち、痛い左前脚をかばって右前脚に負担が出てきて、指動脈に張りも出て、立っているときの姿勢もしんどそうになってきて、装蹄を替えたり、消炎剤などでの治療を行ないました。ですが、今度はその右脚をかばって左脚が、という順でどんどん悪くなって、11月末から12月ごろには、立っているのもつらそうな状態になった。そこで、トレセンのクリニックに入院させ、状態が落ち着いた2月頃にいわきのJRA競走馬リハビリテーションセンター(旧競走馬総合研究所常磐支所)に送りました」

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