サトノダイヤモンドで挑む天皇賞・春。
「負けられない」ルメールの胸中

  • 新山藍朗●文 text by Niiyama Airo
  • 村田利之●撮影 photo by Murata Toshiyuki

 それでも、得意のルメールスマイルを欠かすことなく、傍から見ればそのような声は飄々と聞き流しているかのように見えたが、実のところ、ルメール騎手はかなり傷ついていたのだ。そして、胸の内では「あの決断はミステイクじゃない」と繰り返し、同時に「いつか、そのことを証明して見せる」と誓っていた。

 それゆえ、有馬記念で当時の現役最強馬であるキタサンブラックを負かしたとき、それまでの悔しさや、耐えてきた気持ちが、胸の中に一気によみがえってきた。その分、勝利した感動が余計に高まって、涙をこらえることができないところまで達してしまったのだという。

 繰り返すが、彼は熱い男なのである。

 そのルメール騎手が、この春のクラシック2戦では思うような結果を得られず、ファンや関係者から批判めいた声が聞こえてくるようになっては、さすがに内心穏やかではないだろう。

 仮にそうした声が耳に届いていないとしても、クラシック2戦を含めた、ここまでの春のGIの成績は、「世界の」と称されるルメール騎手には、到底納得のいくものではないはずだ。

 その意味でも、「我が子のようだ」と厚い信頼を寄せるサトノダイヤモンドで臨む、今週末の天皇賞・春(4月30日/京都・芝3200m)は「負けられない」というより「どうしても勝たなければいけない」一戦だ。

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