5歳で完成期のサトノクラウン。
「種牡馬の価値」もかけて大阪杯へ

  • 河合力●文 text by Kawai Chikara
  • 村田利之●撮影 photo by Murata Toshiyuki

 そして、その瞬間こそが香港ヴァーズでの快勝劇だった。このレースを終えてノーザンファームしがらきに戻ってきたとき、小出氏はサトノクラウンが完成に近づいたことを確信したという。

「だいぶ体がしっかりしてきたと感じましたね。以前は、走ったときの左右のバランスの差が気になったのですが、(その差が)かなり少なくなっていました。精神的にも子どもっぽさが抜けて、わがままなところを見せなくなってきたんです。だいぶ人のほうに意識が向いて、(鞍上の)指示を聞くようになりました」

 デビュー以来、浮き沈みの激しい成績ではあったが、成績のいいときも、悪いときも、サトノクラウンは未完成の状態からゆっくりと成長し、心身ともに進化を遂げてきた。ゆえに、「復活」ではなく、「完成期に近づいてきた」という表現が適しているわけだ。

 デビュー直後は能力だけで勝っていたが、「今はすべてがそろってきた」と小出氏。そして、その成長を生んだのは、この馬を管理する堀宣行厩舎の力だという。

「デビューから今までずっと、堀厩舎はあくまでも馬の成長を最優先して、いろいろと考えながら調教をこなし、慎重にレースを選択してきました。デビュー3連勝のときも、成績が出なかったときも、その方針を変えずにじっくりと育てていったんですよね。そういった馬本位の育成が、今につながっていると思います」

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