レッドファルクス軽視に異議あり。
高松宮記念は本当に「混戦」なのか

  • 河合力●文 text by Kawai Chikara
  • 村田利之●撮影 photo by Murata Toshiyuki

 佐伯氏が話すとおり、「レースを使いすぎなかった」ことでレッドファルクスは確実に成長を遂げた。もちろん、レッドファルクスの体質を考慮してのことだが、同馬の資質の高さを関係者の誰もが信じて疑わなかったからだ。

 ゆえに、決して無理することなく、大事に育てられてきた。馬のことを第一に考えて、その結果、いつしか右回りでも戦えるまでに体質が強化されたのである。

 そうして、佐伯氏が言う「一度、使うことになった」という右回りのレースに挑戦。前述のコーラルSである。そこで、4着と好走して陣営は右回りにも自信を深めた。それ以来、左回りのレースだけを選択する、ということもなくなった。

 馬の成長を優先し、ゆったりとしたローテーションを貫いてきたのは、管理する尾関知人調教師の方針でもある。そんな尾関調教師が、GI初挑戦を前にして、こんなことを語っていたという。佐伯氏がその内容を明かす。

「実はスプリンターズSの前に、尾関調教師が『この馬にとって、生涯3番目のデキだ』と言ったんです。さらに突っ込んで聞いてみると、生涯1番はCBC賞で、2番が欅Sだったと言っていました。つまりあの時期、本当に馬がよくなっていたんですね」

 レース選択やローテーションなど、レッドファルクスのキャリアにはいくつもの工夫があった。また、少ないレースで結果を出すだけの素質も兼ね備えていた。それらが功を奏して、昨年の完成期にGIを奪取したのだ。

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