左回り、距離、今季実績...不安ありの
モーリスは天皇賞・秋を勝てるのか

  • 土屋真光●文 text by Tsuchiya Masamitsu  村田利之●撮影 photo by Murata Toshiyuki


 実は血統面でもこれを裏付ける要素がある。晩成とされる父スクリーンヒーローだが、5歳時の成績は5戦0勝で、連対は天皇賞・秋での2着があるのみ。その父グラスワンダーも故障の影響があったとはいえ、5歳時は3戦0勝だった。決して早熟ではない一方で、旬が長くないのもこの血統の特徴だ。モーリス自身、本格化が遅くなったのは、気性面の成長と、デビュー前のトレーニングセール向けの強い調教のダメージから完全に回復するのに時間を要した面もある。

 しかし、活路がないわけではない。

 大きいのは展開のカギを握るエイシンヒカリの存在だ。どちらかといえば、「ためて逃げる」タイプではなく、スピードを余すことなく発揮するタイプのこの馬が出走することで、道中は安田記念のロゴタイプや、札幌記念のネオリアリズムがつくり出したような「ためた」ペースになりにくい。むしろモーリスにとって折り合いやすいペースが期待できる。

 調整についても、前述のように変則的だった安田記念や、北海道での調整となった札幌記念と比較しても、美浦トレセンでみっちりとつくられている。20日のレース1週前の追い切りでもウッドコースで1200mから終いまでしっかりと追われた。

 そして、なんといっても心強い鞍上だ。昨年の香港マイル以来のコンビとなるライアン・ムーア騎手は、今年の凱旋門賞において神がかり的な騎乗で4歳牝馬ファウンドを勝利に導いた。これまでモーリスとは3度コンビを組んでGIを2勝。いわばベストパートナーである。

 逆境を乗り越え、"アジアのマイル王"から"中距離王"へ。そして、引退レースとなる香港へ、天皇賞勝利を手みやげにしたい。

■競馬 記事一覧>>

4 / 4

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る