国内初のGI制覇なるか。天皇賞・秋でエイシンヒカリが有利なわけ (2ページ目)

  • 新山藍朗●文 text by Niiyama Airo
  • 村田利之●撮影 photo by Murata Toshiyuki

 なぜなら、エイシンヒカリは「本質的に気が悪い」。それも「相当な悪さ」だという。一昨年、5連勝でオープン勝ちを収めたアイルランドトロフィー(2014年10月19日/東京・芝2000m)で、何が気に障ったのか、直線で突然大きく外によれて、外ラチにぶつかりそうになったことが、そのことをよく物語っている。

 こういう馬がキャリアの浅いうちに逃げて勝つ味を覚えると、それをもう一度矯正して、デビュー戦のような競馬をさせるのは、ほぼ不可能と言えるほど難しいことだという。我慢するよりも、好きなように逃げたほうが、馬には断然楽だからである。先の競馬関係者が語る。

「もしオーナーや調教師に、ひとつくらい負けてもいいから、その経験を糧にして、差す競馬を覚えさせようという意向があれば、どうにかなっていたかもしれません。でも、オーナーも、調教師も、それを望まなかった。それで、エイシンヒカリはハナを切って逃げて勝つ、今のようなタイプの馬になったわけですが、あのスピードを切れ味に転換できていたら、どんな馬になっていたでしょうか。きっと、今よりもはるかにすごい馬になっていたと思います」

 海外でGIを2勝し、今夏のワールド・サラブレッド・ランキングでは、日本馬としてはジャスタウェイ以来の1位に輝いたエイシンヒカリ。それほどの馬が、実はもっと強い馬になっていた可能性があるというのだ。今のように逃げて勝つスタイルも魅力的だが、差しても勝てる、もっとスケールの大きな競馬ができるエイシンヒカリも、一ファンとしては見たかった気がする。

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