マカヒキ負けた。名門の見事なチーム戦を見せつけられた凱旋門賞 (3ページ目)

  • 土屋真光●文・写真 text & photo by Tsuchiya Masamitsu


 ファウンドは控えめにスタートを切ると、進行方向左、つまり外枠方向に切れていく馬群を後方でやり過ごしながら、最短距離で中段のインコースを確保する。一旦は後方3番手に控えていながら、まるでワープしたかのようなショートカットで、気がつけば好スタートを切ったマカヒキとは、半馬身差の位置を確保した。2400mのレースにおいて、この序盤の200mの動きが最後まで活きることになった。

 ハイランドリールは絶好のスタートを切り、のしをつけて最内枠から先行したペースメーカーのヴェデヴァニの外で2番手にすんなりと取り付いた。

 オーダーオブセントジョージは落ち着いたところで、馬群に寄せていき、ハイランドリールのいた2番手にそのまま入り、ハイランドリールが縦列で直後に続いた。さらに直後のインコースにファウンド、つまり外側をブロックする2頭を前に置いてファウンドが追走するという隊列が、向こう正面に入る前には形成された。そのブロックのすぐ外にポストポンド、さらにマカヒキ、レフトハンドが位置していた。ここで完全にフォーメーションができたといってもいい。あとはヴェデヴァニを簡単に潰さないようにしつつ、勝負どころまで力を温存する。ここでオーダーオブセントジョージが折り合いを欠いたままだったら、ヴェデヴァニに競りかけて、不本意な形で早々に先頭に立たされていたはずだ。

 そして、勝負どころの4コーナー以降も見事なチームプレーを見せた。直線手前のカーブで、ハイランドリールが少しずつ外に張り出し、オーダーオブセントジョージに接近しようとするポストポンドのコーナーワークを膨らませつつ、ファウンドに進路を開ける。オーダーオブセントジョージは内へと進路を取り、ポストポンドとの間隔を確保する。ポストポンドもこれについていくが、ここでできた僅かな隙間に躊躇なくファウンドが飛び込んだ。まるで詰め将棋のような完璧な形。さらにファウンドが抜け出したあとも、ここまで無駄なくレースを進められたことで、ハイランドリールもオーダーオブセントジョージもまだまだ自身のための競馬への余力を残しており、記録的な上位独占となった。

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