父ディープの無念を晴らす。凱旋門賞に挑むマカヒキに勝機あり (3ページ目)

  • 土屋真光●文 text by Tsuchiya Masamitsu  photo by AFLO

 直線を向いて、他の17頭とまったく異なる抜群の手応えで馬群の外を突き抜けるオルフェーヴル。直線半ばで先頭に立ち、勝つときはこんなにあっさりしたものなのかと思わせた刹那、内に切れ込みながら急ブレーキがかかったように失速すると、一旦は交わしたはずのソレミアに差し返されるという、世界でも類を見ないレース展開でつかみかけた栄光を逃してしまった。オルフェーヴルは翌年も同じようにフォワ賞勝利をステップに臨むも、今度は後に連覇を果たすトレヴのロングスパートの前にまたしても2着に敗れてしまう。その年の日本ダービー馬による初めて出走となったキズナも力及ばず4着だった。

 今年、マカヒキはこれらの名馬を越えなければならない。何しろ、凱旋門賞そのものが、ヨーロッパ以外の調教馬による勝利そのものがないという歴史を持つ。

 これまでの先達の経験を踏まえて、前哨戦のニエル賞から始動。5頭立て、しかもGI勝ち馬はマカヒキのみというメンバーを相手に、右後脚を落鉄しながら、きっちりと測ったかのように差し切り勝ちを収めた。同じステップで臨んだキズナが、ニエル賞で同年の英国ダービー馬ルーラーオブザワールドら強敵を相手に勝利したのと比べて、確かに相手は楽だった。一方で、本番に向けて余裕すら感じさせる勝利でむしろ消耗は少ないといえる。鞍上にはフランス出身のクリストフ・ルメール騎手を配して、より勝利の条件を高めた。10年前、マカヒキの父であるディープインパクトを外から差して2着となったプライドの手綱を取っていたという奇妙な因縁もある。

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