父ディープの無念を晴らす。凱旋門賞に挑むマカヒキに勝機あり (2ページ目)

  • 土屋真光●文 text by Tsuchiya Masamitsu  photo by AFLO

 以来、多くの経験を重ね、遠征スキルをブラッシュアップさせつつ、競走馬レベルも底上げしながら、厚い壁に挑んできた。延べ19頭が挑んだ中には、日本ダービー馬が延べ5頭含まれており、さらに2000年以降に三冠馬になった2頭、ディープインパクト、オルフェーヴルもこれに含まれている。

 ディープインパクトが出走した06年の凱旋門賞はわずかに8頭立て。舞台となったロンシャン競馬場には、日本の調教馬による凱旋門賞制覇の瞬間をひと目見ようと、多くの日本人競馬ファンが詰め掛け、前年の勝ち馬ハリケーンラン、2着馬シロッコらを抑えて、1倍台の単勝オッズに支持された。しかし、結果は前哨戦のGIIニエル賞を制した3歳牡馬レイルリンクが勝利。ディープインパクトは、6歳牝馬のプライドにも差されて3着入線となっただけなく、後に禁止薬物が検出されて失格となった。

 エルコンドルパサーと同じ二ノ宮敬宇調教師、蛯名正義騎手のコンビで臨んだ10年のナカヤマフェスタは、9番人気という低評価ながら、その年の英国ダービー馬ワークフォースと壮絶な叩き合いに持ち込み、アタマ差にまで迫った。宝塚記念を勝って充実期にあったとはいえ、日本では決して超A級レベルの実績でなかったナカヤマフェスタがここまで好勝負に持ち込めたことは、日本の競走馬全体のレベルが十分に高まったことを象徴させるものだった。

 エルコンドルパサー以上に、その重い扉を開ける瞬間に近づいたのが12年に挑戦した4歳のオルフェーヴルだった。ディープインパクトと同じく前年の三冠馬で、前哨戦のフォワ賞を快勝しコースも経験。鞍上には凱旋門賞を2勝しているクリストフ・スミヨンを配し、レース中のサポート役としてアヴェンティーノを出走させて、これ以上ない万全の態勢と条件を揃えてレースに挑んだ。

2 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る