予算は5万円。西へ行く「夏競馬の旅」は、地獄か、極楽か (5ページ目)

  • 土屋真光●旅人 Traveler&text&photo by Tsuchiya Masamitsu

「今日か、明日から、早速行ってくれるかな?」

 このおっさんは、エスパーか、何かなのか。仕方なく、「もう旅に出ているんですよ。笠松に。だから、やっぱり無理です」と言うと、編集担当Tはこう畳み掛けてきた。

「じゃあ、ちょうどいいじゃん。そっからスタートしてよ!」

 いやいや......。もう全然、新潟も小倉も関係ないし......。だったら、せめて涼しい北海道に行きたいと思ったが......。

「北海道はさ、もう別のライターさんに行ってもらっているから。もうそろそろ着く頃じゃないかな。だから、ツッチーは新潟か小倉で。どうせなら、小倉がいいかな」

 アホか!! そう怒鳴ってやりたかったが、しがないライターがそんなことを言えるはずもない。でもなんで、別のライターさんには事前に連絡があって、ワシはいきなりなのか。

「だって、そのほうが面白いじゃん」

 絶句である......。朝、風呂でさっぱりした気分はどこへやら。編集担当Tの"鬼のひと言"で、この夏いちばんの過酷な日々が始まったのであった。

(つづく)

「夏競馬」珍道中~北日本編はこちら>>

5 / 5

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る