予算は5万円。西へ行く「夏競馬の旅」は、地獄か、極楽か (2ページ目)

  • 土屋真光●旅人 Traveler&text&photo by Tsuchiya Masamitsu

 その川崎競馬場に向かう前のことだ。まずは本日の軍資金をおろすべく銀行のATMに寄った。ついでに通帳の記帳もしたところ、覚えのない入金がスポルティーバ編集部からされていた。

「ラッキー♪」

 入金されていたのは、5万円。普段恵まれない筆者に対して、心ばかりのボーナスのようなものだろうか。「スポルティーバって、優しいなぁ~」と、そんなふうに勝手に解釈していた。同時に、「さて、このお金で何をしようか」などと、思案を巡らせた。

 そのとき思いついたのが、10年近くご無沙汰だった笠松競馬場(岐阜県)への訪問だ。幸いにして、翌日に開催がある。翌日の日帰りなら、他の原稿執筆にも支障はない。決まり、である。

 では、新幹線で行くか。いやいや、そこは少しでも節約して、その分、馬券を多く買おうではないか。勝って、帰りはゆったりとのぞみのグリーン車で帰ってくればいい。

 ということで、すぐさまスマホで検索して、深夜便となる東京発、名古屋行きの高速バスを予約。3列シート、ネット割引クーポン使用で乗車券は3000円弱である。「これはおトク♪ 名古屋でひつまぶしも食べられそうだ」なんて、ウキウキしていた。

 ならば、と一旦自宅に戻って、旅の荷物をまとめる。日帰りのようなものとはいえ、この暑さだ。朝名古屋に着いたら、サウナでさっぱりしたい。着替えを持って、せっかくの笠松だからカメラも持って、帰りの車内で仕事ができるようにとノートパソコンも、旅行カバンに放り込んだ。

 まさかこの旅の準備が、のちに自分を助けることになるとは......そのときはつゆにも思わなかった。

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