予算5万円、あとは馬券次第。激安で行く北日本「夏競馬の旅」 (3ページ目)

  • 新山藍朗●旅人 Traveler&text&photo by Niiyama Airo

 そこで、前日の夜に出発することにして乗ったのが、上野発23時38分の宇都宮行き。まさに、石川さゆりさんが歌う『津軽海峡・冬景色』の歌い出しの世界である。が、歌の列車は夜通し走り続けて終点の青森まで行くのに、今どきの「上野発」は宇都宮止まり。宇都宮に着いた途端、ホームでは「本日の列車はすべて終わりです」というアナウンスが繰り返し響いた。

 宇都宮に着いたのは、午前1時25分。次の電車は、午前5時18分発の黒磯行きの始発列車。宇都宮駅では、ワタシが乗ってきた列車が到着するや、駅員たちが15分もしないうちに客を駅舎内から追いやって、すべての出入り口に鍵をかけてしまった......。

『餃子像』のある宇都宮駅前でいきなり野宿するはめに......『餃子像』のある宇都宮駅前でいきなり野宿するはめに...... これがこの時間、ワタシが宇都宮にいる理由だ。

 そういえば以前、宇都宮には競馬場があり、2005年まで競馬が行なわれていた。足利競馬、高崎競馬と連携して、北関東の三冠レースもあったという。その3場とも今はないが、もし今も競馬が行なわれていれば、この旅打ち企画のスタートは宇都宮だったかもしれないと、ふと思う。

 駅員の話では、午前4時には駅のドアが開くという。その間、どこで過ごすかにはいくつかアイデアもあったが、結局、駅前広場のベンチで過ごすことにした。

 すぐそばのベンチでは、何人かの酔っ払いが「博打はなぜやめられないのか」と、とりとめのない議論を続けている。

 三日月を浮かべた夜空の下、その議論を聞くともなく聞きながら、缶ビールをちびちびやり、キーボードを打つのもなかなかレアな体験だ。

 東の空が白々と明け始めた。午後にはいよいよ盛岡だ。いざ、勝負!

(つづく)

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