宝塚記念、ドゥラメンテを脅かすのは「器用な馬」シュヴァルグラン (2ページ目)

 3歳春の共同通信杯(2015年2月15日/東京・芝1800m)でも、同馬は2着ドゥラメンテに続く3着と好走。早くから能力の高さを示していましたが、当時はまだドゥラメンテとは差があるように感じました。それでも、決定的な差ではなく、その後の成長次第では埋められるものでした。

 そしてそれ以降、クラシック戦線に無理して向かわなかったのがよかったのか、昨夏のラジオNIKKEI賞(2015年7月5日/福島・芝1800m)ではケタ違いの決め手を繰り出して圧勝。相手が弱かったのは確かですが、成長をアピールするには十分なインパクトがありました。

 秋には古馬一線級を相手にする路線に参戦。毎日王冠(6着。2015年10月11日/東京・芝1800m)、天皇賞・秋(5着。2015年11月1日/東京・芝2000m)と折り合い面に課題が出て善戦止まりとなりましたが、ここでも気性の成長があれば、GIでも勝負になると思わせるレースぶりを見せてくれました。

 迎えた今年、中山記念と大阪杯(4月3日/阪神・芝2000m)では、まさしくその成長した姿を披露。とりわけ前走の大阪杯では、鞍上の好騎乗もありましたが、昨秋は引っかかっていた2000mの距離でも2番手で折り合って、逃げたキタサンブラックをゴール前できっちり捕らえました。非常に大人びたレースぶりで、陣営はこの時点で宝塚記念が"見えた"――つまり、出走しても勝ち負けできる可能性があると確信したのではないでしょうか。

 今回も鞍上は、前走と同じく横山典弘騎手。再び勝ちにこだわった騎乗を見せてくれるでしょう。

前走の天皇賞・春でも3着と好走したシュヴァルグラン前走の天皇賞・春でも3着と好走したシュヴァルグラン さて、このレースの「ヒモ穴馬」ですが、有力馬に挙げたドゥラメンテ、アンビシャスと同世代のシュヴァルグラン(牡4歳)を取り上げたいと思います。前走の天皇賞・春のときにも触れましたが(※4月30日配信。「『善戦マン』返上。サウンズオブアースが天皇賞・春で一変するぞ」)、この馬もまた、昨夏から今年にかけて大きな成長を遂げた1頭です。

 本来であれば、昨秋の菊花賞に間に合って欲しかった馬ですが、結果的にはそこを使わなかったことでパワーアップ。今の、勢いのあるシュヴァルグランにつながっていると思います。

 前走の天皇賞・春でも3着と好走。GIでも勝負できる力があることを証明しました。今度は、抜群の実績を誇る阪神コース。前走以上のパフォーマンスを見せてくれるのではないでしょうか。

 とにかく、折り合いがついて、仕掛けると瞬時に反応。一瞬で抜け出せる速い脚もあって、騎手としてみれば、安心して乗れるタイプです。難しいコースほど、そのアドバンテージが生かされるはず。阪神の内回りコースで行なわれる宝塚記念では、そうやって器用に立ち回れることが間違いなく有利に働くでしょう。

 ドゥラメンテ、アンビシャスにも迫れる存在だと思います。どんなレースをしてくれるのか、楽しみですね。

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プロフィール

  • 大西直宏

    大西直宏 (おおにし・なおひろ)

    1961年9月14日生まれ。東京都出身。1980年に騎手デビュー。1997年にはサニーブライアンで皐月賞と日本ダービーの二冠を達成した。2006年、騎手生活に幕を閉じ、現在は馬券を買う立場から「元騎手」として競馬を見て創造するターフ・メディア・クリエイターとして活躍中。育成牧場『N.Oレーシングステーブル』の代表も務め、クラシック好走馬を送り出した。

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