安田記念は香港帰りモーリス、ドバイ帰りリアルスティールの対決に注目 (2ページ目)

  • 土屋真光●文 text by Tsuchiya Masamitsu  photo by Kyodo News

 モーリスは香港から帰国後、白井のJRA競馬学校で1週間の輸入検疫を受けたあと、着地検疫で東京競馬場の検疫厩舎に入厩という、イレギュラーな調整が進められている。この間は他の馬との接触もなくたった1頭。状態を間際まで見極めてから出走を決めるとの方針だ。伝え聞いた話によれば、騎乗予定のトミー・ベリー騎手も、早くからオファーを受けながらも、ダービー開催時の段階で「まだ本当に出るのか確定していないんだ」と周囲に漏らしていたそうだ。それだけにモーリスの能力は認めながらも、慎重にならずにはいられない。

 しかし、香港の時点で安田記念を見据えた調整がなされていたのは明らかだった。理由のひとつは馬体重で、昨年は安田記念が510kg、マイルチャンピオンシップが508kg、香港マイルが約508kg(1120ポンド)と、休養明け、海外遠征を問わずにほぼ同じ体重で推移していたのだが、チャンピオンズマイルでは約519kg(1145ポンド)と大きめに体を作ってきた。もちろん、馬自身の成長もあるだろうが、やはり、この後の輸送や転戦における馬への負担を考慮し、先回りした調整がなされていたのではないかと推察される。
 
 また、通例ならレースの翌日ないし翌々日となる日本への帰国も、なんとレース当日の深夜に行なわれ、レースから24時間も経たないうちに競馬学校へと到着した。異例のスピード帰国は、より日本での調整時間を確保するため、あらかじめ輸送便を手配していたもの。このことからも、入念に安田記念から逆算した調整がなされていたことがわかる。

 今回騎乗するベリー騎手は、日本での重賞勝ちがなく、その点を不安視する声もファンからは囁かれている。しかし、騎乗している馬の質や人気を考えれば、今回の来日で勝率10%以上をキープしているのは上々。そうでなくても、地元オーストラリアだけでなく、香港、シンガポールなどでもビッグレースを相次いで制しており、5月も好メンバーが揃った香港のGIチェアマンズスプリントプライズ(香港シャティン・芝1200m)をシャトーカで制したばかり。むしろ心配は皆無と言っていいだろう。

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