蛯名正義、皐月賞馬ディーマジェスティで挑む「ダービーの勝算」 (3ページ目)

  • 新山藍朗●文・撮影 text&photo by Niiyama Airo

――ところで、蛯名騎手は誰もが認めるトップジョッキーです。3歳クラシックも、牝馬の桜花賞、オークス、牡馬の皐月賞、菊花賞とタイトルを手にしています。しかし、何度か惜しいレースはあるものの、ダービーだけは勝てていません。特に印象に残っているのは、2012年。フェノーメノに騎乗して、わずか23cmの差で敗れたときでした。そしてあのとき、蛯名騎手が語った「完璧に乗ったからって(ダービーは)勝てるわけじゃない」という言葉は、今でも鮮明に覚えています。当時の心境を振り返っていただけますか。

「着差がね、それだけしかなかったですからね。それで、『何とかならなかったのかなぁ……』という気持ちと、『俺は決して下手には乗ってないんだけどなぁ……』という思いが自分の中にずっとあって、そうした感情がそのまま“あの言葉”になって出てしまいましたね。ダービーを勝つ、というのはそれぐらい難しい、厳しいということですよ。もちろん、うまく乗ることも、完璧に乗ることも大事なことで、そこにいろいろな条件が噛み合うことも重要な要素。だけど、ダービーはそれでもなお勝てない。では、他にあと、何が必要なのか……」

――“運”ですか。

「ひと言でまとめてしまえば、その言葉になるんだろうけど、その“運”というひと言の中にも、そこには奥深いものがあるよね。すぐにも手に入りそうで、なかなか手に入らない――そういう奥深さが。でも、それこそが『ダービー』というレースの重みなんじゃないかっていう気がする」

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