人間好きでブーブー鳴くシンハライトは、オークスでこそ真価を発揮

  • 河合力●文 text by Kawai Chikara
  • 村田利之●撮影 photo by Murata Toshiyuki

 さらに、2400mという距離は、シンハライトの性格からしてもプラスになるという。前出の鈴木氏が語る。

「シンハライトは、すごく乗りやすい馬で、頭がいいんですよね。折り合いを欠くようなこともなく、無駄な力を使うことがないんです。ですから、距離が2400mに延びても、何ら不安はありません。普段の様子を見ても、本当にかわいいんですよ(笑)。人間が大好きで、僕らが近づくとブーブー鳴くんです。そういうタイプですから、折り合いの心配もないと思いますよ」

 これまでのレースを振り返っても、確かに騎手に反抗するようなところは一切見られなかった。どんなレースにも対応し、センスのよさが随所に感じられた。その裏には、この馬の際立った従順さがあったのだ。それこそ、騎手の指示に従えるかどうかがポイントになる初距離で、大きなプラスアルファとなるに違いない。

 順調に成長を重ねる彼女だが、これまでまったく苦労がなかったわけではない。430kgの小柄な体形からもわかるとおり、“食の細さ”には鈴木氏をはじめ、スタッフの誰もが気を使ってきた。

「最初の頃は、カイ食い(※カイバの食べっぷり。カイバとは馬が食べるエサのこと)が悪くて、体重の維持に神経を使いました。デビュー戦を勝ったあとも、408kgまで体重が落ちて、カイ食いも細くなったんですよね。でも、2戦目以降はレース後の馬体減が少なくなり、レースを使ったあともすぐにカイバを食べるようになったんです。桜花賞のあとも、激しいレースをこなしたにもかかわらず、予想以上に状態はよかったですね」

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