NHKマイルC。トウショウドラフタがメジャーエンブレムを脅かす

 前述したとおり、メジャーエンブレムの最大の長所は、そのスピードの持続力が他馬よりもずっと優れているところ。とすれば、理想のレース運びは、ハナを切って後続馬についてこさせ、差し、追い込み馬にもなし崩しに脚を使わせることです。要するに、自分でレースを作って、スピードで押し切ってしまうのが、最も勝利に近い乗り方だと思います。

 今回のNHKマイルCで言えば、同じくダイワメジャーを父に持つカレンブラックヒルが勝ったレース(2012年)のイメージです。スタートから先頭に立つと、そのままレースを引っ張って後続に3馬身以上の差をつけて逃げ切り勝ちを収めました。メジャーエンブレムは今回、桜花賞ほど断然の人気にはならないでしょうから、状態さえ保っていれば、同様の競馬ができると思います。

 唯一の懸念は、繊細な牝馬ゆえ、桜花賞のような競馬をしてしまうと、その後少し気性がうるさくなることがあることです。そうなっていた場合は、この馬の平均的な速度ではなく、ハイラップを刻んでしまう可能性があります。当日のパドックでは、イレ込み具合や、馬体重の増減をしっかりチェックしたいですね。

 もう一頭、注目度が高そうなのは、クラシックからの参戦組となるロードクエスト(牡3歳)です。ここ3戦は、右回りの2000m戦、1800m戦、2000m戦と使われてきましたが、今回は新馬(2015年6月7日/東京・芝1600m)、新潟2歳S(2015年8月30日/新潟・芝1600m)と、圧巻のパフォーマンスを見せてきた左回りのマイル戦に戻ります。得意の舞台で、以前の輝きを取り戻す可能性は十分にあります。

 とはいえ、昨年末のホープフルS(2着。2015年12月27日/中山・芝2000m)ではいい走りを見せましたが、年明け2戦の内容には、何か物足りなさを感じました。

 とりわけ不満に思ったのは、前走の皐月賞(4月17日/中山・芝2000m)。確かに相手が強く、距離をロスしないために最内を突いたのは最善策だったと思いますが、もともとハイレベルな3歳牡馬戦線にあって、この馬も1、2を争うほど期待されていた1頭。できるなら、もっと堂々と立ち回って欲しかった、というのが正直なところです。

 逆に言えば、そうした競馬に徹しないと、勝負にならないということだったのでしょう。ということは、今では昨夏のときのような圧倒的な存在ではなく、他馬の成長もあって、その差はなくなってきているのだと思います。もはや実力上位とは言えないかもしれませんね。

 さて、このレースの「ヒモ穴馬」には、トウショウドラフタ(牡3歳)を挙げたいと思います。

現在3連勝中と勢いに乗るトウショウドラフタ現在3連勝中と勢いに乗るトウショウドラフタ この馬の走りを見る限り、やや気難しい面を持っているような気がします。そう思うのは、ハミを取りすぎるというか、一気に脚を使ってしまうところです。しかし、脚を溜(た)めることができれば、その爆発力は相当なもの。控える競馬に徹したこの3戦は、相手はどうあれ、1頭だけケタ違いの決め手を繰り出して3連勝を飾りました。その3戦は田辺裕信騎手が手綱を取っていますが、よほど手が合うんでしょうね。

 懸念されるのは、この3戦が1400m戦ということ。これまで7戦して、1400m戦は5戦4勝、5着が1回。残り2戦はマイル戦で、11着、7着と大敗しています。今回はそのマイル戦。一抹の不安を抱えています。

 ともあれ、敗れたマイル戦は、ともに休養明けでした。また、その当時よりも今は気性的にも、身体的にも成長していると思います。大敗した2戦の結果は度外視していいでしょう。

 まして、メジャーエンブレムが作る速いラップのレースとなれば、1400m戦と同じような競馬で追走できると思います。期待が膨らみますね。

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プロフィール

  • 大西直宏

    大西直宏 (おおにし・なおひろ)

    1961年9月14日生まれ。東京都出身。1980年に騎手デビュー。1997年にはサニーブライアンで皐月賞と日本ダービーの二冠を達成した。2006年、騎手生活に幕を閉じ、現在は馬券を買う立場から「元騎手」として競馬を見て創造するターフ・メディア・クリエイターとして活躍中。育成牧場『N.Oレーシングステーブル』の代表も務め、クラシック好走馬を送り出した。

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