AJCCで重賞初制覇なるか。脅威の末脚秘めるライズトゥフェイム (2ページ目)

 サトノラーゼンは、本質的には中距離馬。ダービー(5月31日/東京・芝2400m)では内をうまく回って2着に入りましたが、正直2400mの距離も同馬には少し長かったと思います。しかし今回の中山・芝2200mという条件は、好位で競馬ができるこの馬にとって、距離的にも、コース的にもぴったりです。

 また、鞍上がF・ベリー騎手というのもいいですね。いかにも、この馬と手が合いそうです。ディサイファにとっては、まさに手強い相手になるのではないでしょうか。

本格化の兆しが見えてきたライズトゥフェイム本格化の兆しが見えてきたライズトゥフェイム さて、今回の「ヒモ穴馬」ですが、成長過程と雰囲気がなんとなくディサイファに似ている、ライズトゥフェイム(牡6歳)を取り上げたいと思います。

 デビューしたのは2歳の12月で、2戦目はそこから約3カ月後の、明けて3歳となった2月末でした。これだけ間隔を開けたことで、「あまり体質が強くないのかな?」と思いました。実際、そうした課題を抱えていたようですが、2戦目の未勝利戦を勝ち上がったときは、そのレース内容を見て「(体質が)よくなってくれば、必ず走ってくるだろう」と思いましたね。

 その後、3戦目もまた間隔が開いて、復帰戦はおよそ7カ月後の9月でした。長期休養明けでも、500万条件戦をあっさり勝って連勝。未勝利戦のときに感じた思いが、確信に変わりました。

 ただその後、いい競馬をするときもあるのですが、安定した成績を残すことができず、下級条件でウロウロとしていました。それが昨年9月、1600万条件のレインボーS(1着。9月19日/中山・芝2000m)で一変。何かひと皮むけた雰囲気を漂わせ、本当に強い競馬を披露してくれました。その切れのある競馬を見たとき、「いよいよ本格化したかな」と感じましたね。

 それを証明したのが、次走のオープン特別アイルランドT(10月18日/東京・芝2000m)でした。昇級初戦ながら、勝ち馬に鋭く迫って2着。その決め手と脚力は、まさしくオープンでも通用するものでした。

 その結果から、当然前走の中山金杯(1月5日/中山・芝2000m)も注目して見ていました。しかしレースは、前半1000mが62秒を超える極端なスローペースとなって、しかも距離を意識して、あえて後方に控えていた1番人気のフルーキー(牡6歳)をマーク。それがあだとなって、メンバー最速のうえ、中山コースでは珍しい32秒6という上がりタイムを記録しながら、4着にとどまりました。

 残念ながら重賞制覇はなりませんでしたが、強烈な決め脚を繰り出したライズトゥフェイム。「負けて強し」の内容だったことは間違いありません。

 とすれば、AJCCは仕切り直しの一戦。今回は前に行く馬もはっきりしていて、前走のような超スローペースになることはないと思います。展開次第では、重賞常連馬たちをまとめて負かしてしまう可能性も十分にあるでしょう。一発を期待したいですね。

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プロフィール

  • 大西直宏

    大西直宏 (おおにし・なおひろ)

    1961年9月14日生まれ。東京都出身。1980年に騎手デビュー。1997年にはサニーブライアンで皐月賞と日本ダービーの二冠を達成した。2006年、騎手生活に幕を閉じ、現在は馬券を買う立場から「元騎手」として競馬を見て創造するターフ・メディア・クリエイターとして活躍中。育成牧場『N.Oレーシングステーブル』の代表も務め、クラシック好走馬を送り出した。

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