小牧場生まれのキタサンブラック、有馬記念も『まつり』熱唱か

  • 河合力●文 text by Kawai Chikara
  • 村田利之●撮影 photo by Murata Toshiyuki

 菊花賞のレース前には、3000mという距離を不安視された。それは、母シュガーハートの父が“名スプリンター”のサクラバクシンオーだったからだ。その血が、「スタミナ勝負に適さない」と考えられた。

 しかし梁川氏は、そうした心配は一切していなかった。

「馬体が母とは違うし、サクラバクシンオーとも違っていました。ですから、距離については、そこまで気にしていませんでした。それよりも、これだけの強豪相手にどこまで戦えるか。そういった相手関係のほうが不安でしたね」

 迎えた菊花賞。道中インコースを追走したキタサンブラックは、直線でわずかなスペースから抜け出して見事優勝した。現地でその雄姿を見守っていた梁川氏。自らの生産馬が“花形”であるクラシックのタイトルを制したことは、やはり格別の喜びだったようだ。

「クラシックの舞台は、『生産馬を出走させたい』と思っても、そう簡単には実現できないこと。それほどのレースで、それも強い馬を相手にして勝ってくれて、本当にうれしかったですね。オーナーの北島三郎さんとも、喜びを分かち合いましたよ」

 キタサンブラックのオーナーは、長年馬主として多くの馬を所有してきた歌手の北島三郎氏。そんな演歌界の大御所と、梁川氏の父・正克氏が旧知の仲で、ヤナガワ牧場とは50年にもわたる親交があった。それほど関係の深いオーナーの、初のGI制覇が、自らの牧場の生産馬であったことも、梁川氏の喜びを倍増させた。

 梁川氏が、オーナー・北島氏とキタサンブラックの出会いを回想する。

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