小牧場生まれのキタサンブラック、有馬記念も『まつり』熱唱か

  • 河合力●文 text by Kawai Chikara
  • 村田利之●撮影 photo by Murata Toshiyuki

 実際、キタサンブラックは幼少期の頃から、素質を感じさせる存在だったという。梁川氏が当時の様子を振り返る。

「(キタサンブラックは)体つきがよくて、走りも素軽かったですね。いい馬だと思いました。ただ、1歳くらいになると、脚がグンッと伸びたので、そこだけは心配でした。あまりに脚が伸びて体高が高くなると、バランスが悪くなってしまうので。それで、しばらくは不安もあったのですが、結局は大した問題にもならず、(牧場の)期待馬になっていました。もちろん、GIを勝てるとまでは思いませんでしたけど(笑)」

 同馬の母シュガーハートも、ヤナガワ牧場の生産馬だった。生まれたときから牧場でも高く評価されていたが、デビューまであと1~2週というところで、不運にも屈腱炎(くっけんえん/競走馬にとって「不治の病」と呼ばれる脚部の病気)を発症。無念の引退となってしまった。

 レースに出ることはなかったシュガーハートだが、その素質を信じたヤナガワ牧場が、彼女を繁殖牝馬として繋養(けいよう)した。そして、3番目に生まれた子が、のちに菊花賞馬となるのである。

 梁川氏はその子、キタサンブラックのレースぶりを見て、母親の面影を感じるという。

「母はレースに出ていないのですが、キタサンブラックのスッと先行できるスピードは、きっと母譲りだろうな、と思っています。とはいえ、体つきは母と子で、まったく違うんですよ。かといって、父のブラックタイドに似ているわけでもありません。おそらく、母と父のどちらかではなく、両方のいいところがうまく合わさったのでしょうね。それが、(キタサンブラックの)強さにつながっているのかもしれません」

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