メンバー手薄なJC。牝馬ショウナンパンドラにもチャンスあり (2ページ目)

 確かにラブリーデイは、今回と同じ舞台で行なわれた昨年のメトロポリタンS(2014年4月26日/東京・芝2400m)を快勝し、今年も芝2400m戦の京都大賞典(10月12日/京都)で圧倒的な強さを見せましたが、格下相手だったメトロポリタンSや、スローの上がり勝負だった京都大賞典とは、さすがにメンバーも、展開も、今度のJCは違います。

 東京・芝2400mというのは、馬の力通りの結果が出やすいコースです。言い換えれば、ごまかしが利かないコースです。特にGIの舞台となれば、相当タフな競馬になるだけに心配です。もちろん、オツリが残っていれば、距離も持つでしょうから、調教やパドックの状態はしっかりとチェックしておきたいところです。

 そうすると、実績馬の中では、ミッキークイーンが最も減点材料が少ないかもしれません。反対に強調材料は多く、まずはなんと言っても、これまで連対を外していません(7戦4勝、2着3回)。これは、まだ底を見せていない証拠であって、さらに伸びる可能性を秘めています。

 単純に考えても、斤量53kgで出走できる3歳牝馬は、やはり有利です。ジェンティルドンナが"怪物"オルフェーヴルを負かしたのも、その斤量差(4歳以上の牡馬は57kg)があったからでしょう。

 ミッキークイーンの鞍上は、天皇賞・秋で前出のラブリーデイを勝利に導いた浜中俊騎手。強力なライバルとなるラブリーデイの脚を知っていることは、大きな強みになるのではないでしょうか。ラブリーデイとの間合いを測る競馬ができるなど、いろいろな意味で優位に働きそうです。

牡馬一線級相手にも引けを取らないショウナンパンドラ牡馬一線級相手にも引けを取らないショウナンパンドラ さて、今回の「ヒモ穴馬」ですが、牝馬のショウナンパンドラ(牝4歳)を取り上げたいと思います。前述したとおり、今年は層が薄い古馬王道路線。そうした状況だからこそ、可能性を感じています。

 そもそも、オールカマー(9月27日/中山・芝2200m)では、牡馬一線級とも五分以上の争いをしていたヌーヴォレコルト(牝4歳)を、豪快に差し切って快勝しました。この時点で、すでに牡馬一線級を相手にしても引けを取らないだろうという算段はついていましたが、それを証明したのが、前走の天皇賞・秋でした。結果は4着にとどまったものの、外枠不利と言われるレースで、7枠15番からの競馬でしたから、十分に好走したと言えるでしょう。

 今回は距離が伸びますが、最後で持久力勝負になる2000m戦よりも、向こう正面でゆったりと走ることができる2400m戦のほうが向いていると思います。充実期を迎えた今、本当に調子が良さそうですし、今年のメンバーなら、かなりチャンスがあると見ています。

 ちなみに、今年の日本馬のレベルを考えると、ここ数年出番のなかった外国馬にもチャンスがあるかもしれません。近年、12月に香港で開催されている香港国際競走との兼ね合いで、JCに参戦してくる海外招待馬の質が落ちた、と言われていますが、今年は1着賞金が3億円に上がって、外国馬の本気度も違いそうです。超一流と言える馬の参戦はありませんでしたが、決して侮れないと思います。もしかすると、これから再び、外国馬のレベルが上がっていくかもしれませんね。

プロフィール

  • 大西直宏

    大西直宏 (おおにし・なおひろ)

    1961年9月14日生まれ。東京都出身。1980年に騎手デビュー。1997年にはサニーブライアンで皐月賞と日本ダービーの二冠を達成した。2006年、騎手生活に幕を閉じ、現在は馬券を買う立場から「元騎手」として競馬を見て創造するターフ・メディア・クリエイターとして活躍中。育成牧場『N.Oレーシングステーブル』の代表も務め、クラシック好走馬を送り出した。

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