【競馬】秋華賞制覇へ。苦境を乗り越えた良血トーセンビクトリー (3ページ目)

  • 河合力●文 text by Kawai Chikara
  • photo by Nikkan sports

 セレクトセールで落札される高額の良血馬たちは、ほとんどが大牧場であるノーザンファームや社台ファームといった“社台グループ”の生産馬。それらを島川氏が購入した場合、通常は、育成やケガの療養、放牧を、そのまま社台グループの施設に任せている。

 だが、今回は「オーナーの意向」をもとにノーザンファームと協議したうえで、小見川分場が療養先に選ばれた。トーセンビクトリーが来ると聞いて山口氏が驚いたのは、そのような経緯からだった。

「ビクトリーの療養中は、ノーザンファームの方からもアドバイスをいただいて、無事に回復させることができました。その後は、徐々に馬を動かして、復帰を目指しましたね。軽いメニューのときは、私がビクトリーにまたがったので、良血馬に乗れる喜びを感じました」

 同馬が来たときから、「自分が乗る瞬間を想像していた」という山口氏。だからこそ、初めてまたがったときのことが忘れられないという。

「自分で乗って歩かせたとき、鳥肌が立ちましたね。乗っている感じが気持ちよいというか、『これが良血馬なのか』と(笑)。本当にいい馬だと確信しました。それも、当時は骨折明けで、まだ筋肉が戻っていない時期。それでこの乗り味ですから、『万全の状態になったらどれだけすごいんだろう』と思いましたね。きっとGI戦線に乗っていってくれるだろうと感じました」

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