【競馬】秋華賞制覇へ。苦境を乗り越えた良血トーセンビクトリー

  • 河合力●文 text by Kawai Chikara
  • photo by Nikkan sports

 トーセンビクトリーは、トゥザグローリーやトゥザワールドの全妹となる。そのため、生まれたときから注目され、1歳となった2013年のセレクトセール(日本最大級の競走馬セリ市)に上場されると、1億500万円の高値で落札された。落札者は、島川隆哉氏。高額馬を数多く所有している有名なオーナーだ。

 それから1年が経過した2014年8月、2歳となったトーセンビクトリーはデビュー戦を迎えるが、そこで3着に敗れると、続く未勝利戦でも2着。まさかの連敗を喫した。それでも、10月の3戦目で勝利。そこからクラシック戦線へと加わっていくはずだった。が、その直後の11月に骨折が判明。全治6カ月と診断されて、翌春のクラシック挑戦は絶望的となった。

 骨折した同馬が、療養のために向かったのは、千葉県のエスティファーム小見川分場だった。小見川分場は、島川氏が一から作った競走馬の育成施設。島川氏は北海道に生産牧場を持っており、そこで生産された馬のほとんどがデビュー前に小見川分場に来て、トレーニングを行なっている。

 この地で、彼女は驚くほど順調に回復していったという。担当した厩舎長の山口剛氏が、当時を振り返る。

「ビクトリー自身は、『本当に骨折しているの?』というくらい、こちらに来たときから元気でした。骨折も、当初全治6カ月と診断されましたが、結果的に4カ月ほどで回復しました。小見川でこれだけの良血馬を世話するのは初めてなので、こちらに来ると聞いたときはびっくりしました。そして、無事に治ってホッとしましたね」

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