【競馬】外国人牧場長が訴える、中小牧場発展のための「手立て」

  • 河合力●文 text&photo by Kawai Chikara

『パカパカファーム』成功の舞台裏
連載●第50回

1990年、アイルランドから獣医師として日本にやって来たハリー・スウィーニィ氏。その後、2001年には競走馬の生産牧場である『パカパカファーム』を開場し、すでにGI馬を3頭も輩出してきた。中小牧場としては、十分な成功を収めていると言えるが、日本の競馬界は中小牧場が生き残っていくには、「決して恵まれた環境ではない」という。そこで今回は、中小牧場がこれから発展・飛躍していくための、スウィーニィ氏からの提言を紹介する――。

パカパカファームの高台から自らの牧場を見渡すスウィーニィ氏。パカパカファームの高台から自らの牧場を見渡すスウィーニィ氏。 1990年に来日し、2001年よりパカパカファームを開場したハリー・スウィーニィ氏。25年間、馬産地から日本の競馬を見続けてきた彼は、その期間で起きた"変化"のすべてを見届け、それについていろいろな考えを巡らせてきた。

 そんな彼が、中小牧場の活性化を図るために、「どうしても実現してもらいたいことがある」と言う。まず、そのひとつが「生産者賞」の増額だ。

 JRA(日本中央競馬会)のレースでは、5着以内に入った競走馬に本賞金が交付される。賞金の振り分けは、所有する馬主が80%、管理する調教師が10%、騎手が5%、馬の世話をする厩務員(きゅうむいん)が5%で、生産者である牧場には、賞金が入ることはない。

 ただし、賞金とは別に「生産者賞」という形で、上位馬の生産牧場に決められた金額が給付されるシステムがある。これは、細かく言うと、当該馬を生産した牧場に与えられる「生産牧場賞」と、当該馬が生まれたときにその母馬を所有していた人に与えられる「繁殖牝馬所有者賞」のふたつに分かれている。

 競走馬は、馬主に引き取られた時点で牧場の所有馬ではなくなる。そこでJRAは、馬産地奨励のために、この「生産者賞」を設定。生産牧場としては、それが大きな励みでもあり、牧場経営の支えにもなっていた。が、その賞金が一時に比べて大幅に減ってしまったという。

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