【競馬】細江純子が語るダービー「最後は『執念』で決まるレース」 (3ページ目)

  • スポルティーバ編集部●構成 text by Sportiva
  • 村上庄吾●写真 photo by Murakami Shogo

 岩田騎手はNHKマイルCで騎乗停止処分を受けてしまい、ヴィクトリアマイル、オークスと騎乗できませんでした。それならと、空いた時間をディープブリランテのダービーのために費やそうと、調教を任せて欲しいと矢作芳人調教師に申し出ました。しかし厩舎の方針もあるわけなので、調教師とぶつかり合うことに。そんな経緯がありつつも信頼を得て、ときには調教助手、ときには厩務員の役割もこなし、馬具に関してもこだわりました。ですので、すべてに自分で責任を持ち、馬も人も真正面からぶつかりあいながら、ディープブリランテを理解したうえでダービーに臨んでいたのです。

 ゴール前最後の最後、外から来たフェノーメノ(父ステイゴールド)に交わされそうでしたが、7cm差で先着。あのわずかな差は岩田騎手の気迫だったと思います。

2012年ダービー。ディープブリランテ(奥)がフェノーメノ(手前)の 追撃をハナ差振り切って、優勝。Photo by Kyodo  News2012年ダービー。ディープブリランテ(奥)がフェノーメノ(手前)の 追撃をハナ差振り切って、優勝。Photo by Kyodo News

 本人も言っていましたが、フォームが乱れても関係ないほどガムシャラだったそう。みんなイっちゃってると思うんですよ。馬も人もハイと言うか、ゾーンと言うか、人間も馬も神の領域に近づきそうな感じで……。

 それだけに、勝ったあとに岩田騎手が馬に抱きついたとき、ディープブリランテもじっとしていたんです。素敵だなあと思いましたね。本当に。なんて素敵なんだと。その前の“怖さ”があっただけに、余計にそう感じました。

 ダービーはよく「運がいい馬が勝つ」とは言われますが、運も必要ですけど、決してまぐれで勝っちゃいけないレースだし、まぐれでは勝てないレースだと思います。だからダービージョッキーであったり、ダービートレーナーであったり、ダービー厩務員という他にはない名誉があるんだと思います。

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