【競馬】細江純子が語るダービー「最後は『執念』で決まるレース」 (2ページ目)

  • スポルティーバ編集部●構成 text by Sportiva
  • 村上庄吾●写真 photo by Murakami Shogo

 私が騎手のときは、あまりにも遠い存在のレースだったので、恥ずかしながら何も理解していませんでした。ですが、この仕事をするようになって、知れば知るほど奥深いものだと感じます。普段、ほかのGIではそんなことないのに、ダービーだけは、競馬場内の雰囲気がお祭りのよう。あれは本当に不思議ですね。

 私がこれまでダービーを取材していて一番感じられるのが、人や馬の「執念」や「怖さ」です。怖くなるぐらいの気迫だとか、そういうものが伝わってきますし、勝つ人馬こそ、それが本当に強いのです。
 
 そういう意味で真っ先に思い出されるのが、まず2002年のタニノギムレット(父ブライアンズタイム)です。タニノギムレットは皐月賞、NHKマイルカップと続けて1番人気ながら3着に敗れ、ダービーに向けて今度こそ負けられないという状況でした。

 そのダービー直前に、タニノギムレットを管理していた松田国英調教師に馬を見せていただいたのですが、発する「気」が怖くて近づくことができませんでした。私自身、騎手時代から馬には慣れているはずなのに、彼を見たときに「馬ってこんなに怖いの!?」と足がすくんで近づけないほど。自分がタニノギムレットを見ているというよりは、タニノギムレットに見下ろされているような感覚で、殺気立つ怖さがありました。今までの知っている「馬」とは、まったく違う生物のように感じたのです。

 2012年のディープブリランテ(父ディープインパクト)が勝ったときのことも印象に残っています。あのときは、人。岩田康誠騎手は正直、怖すぎました。

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