【競馬】小牧場に3つ目の勲章をもたらしたクラリティスカイの半生

  • 河合力●文 text by Kawai Chikara
  • 村田利之●撮影 photo by Murata Toshiyuki

 そして翌日も、スウィーニィ氏の興奮は続いていた。山田さん曰く、「満面の笑みで、スタッフひとりひとりと朝からハグしていました。私は断ったのですが、それでもハグされました(笑)」とのこと。顔の広いスウィーニィ氏は、牧場周辺の人たちからも、次々に「おめでとう」と声をかけられたという。それは、まさに“至福のひととき”だっただろう。

 クラリティスカイは、スウィーニィ氏にとって「生まれたときから期待していた一頭」だった。その証拠に、当歳時(0歳)には国内最大級の競走馬のセリ市、セレクトセールに上場していた。ただ、そこでは取引成立に至らず、その後、セレクトセールで同馬をチェックしていた杉山忠国オーナーが購入した。同オーナーに、初のGIタイトルをもたらしたことで、スウィーニィ氏の喜びは一層大きかったようだ。

 クラリティスカイの幼少期を見ていた山田さんは、同馬について、印象に残っている姿があるという。

「小さい頃、クラリティスカイはいつも牧場の中を駆け回っていました。放牧地の坂を上るときはもちろん、下るときもかなりのスピードで走っていたんですね。普通はバランスを崩しやすいので、下り坂で走るのは簡単ではないのですが、クラリティスカイは平気でした。それだけ体がしっかりしていて、バランスもとれていたんだと思います」

 ちょうどその頃、クラリティスカイと同じ放牧地で一緒に走り回っていたのが、地方競馬の園田競馬で活躍する同い年のインディウム(牡3歳)だった。山田さんによれば、「インディウムがいつも先頭を走り、その馬群の後ろにクラリティスカイがついていた」という。

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