【競馬】日本の牧場の行方を左右する「牝馬問題」 (2ページ目)

  • 河合力●文 text&photo by Kawai Chikara

 パカパカファームの代表を務めるハリー・スウィーニィ氏も、この問題について、「度々、頭を悩ませてきた」という。

「牡馬のほうに買い手が集まるのは仕方がないこと。ただ、私の感覚的なものですが、特に日本は"牝馬を売りにくい環境"にあると思います。セリに出しても、牝馬というだけで買ってもらえないケースがとても多いですし、同じ血統でも、牝馬は牡馬の半分ほどの価格になってしまいますからね。なかでも、私たち日高地方の生産馬は、その傾向がより顕著に出ているような気がします」

 生まれてくる仔馬の性別は、人間の力が及ばない領域である。牡馬が生まれるかどうかは、「運」としか言いようがない。しかし、それによって生じる利益の差が、牧場にとっては大きなダメージとなる。

 前述のスタッフは、2006年~2008年の出産シーズンを振り返って、当時の牧場の様子をこう語った。

「2006年~2008年は、生まれてきた仔馬が牝馬だと聞く度に、牧場のムードがどうしても暗くなっていきました。立て続けに牝馬が生まれて、私たちスタッフもついショックを受けてしまったんですね。私たちはどの馬に対しても同じように接しなければいけないのに......」

 パカパカファームでは、そのときからスタッフの間で意識改革を図り、仔馬の性別によって落ち込むことはなくなったという。が、仔馬の性別による利益差の問題は、相変わらず多くの牧場が抱えている。それゆえ、「牧場のオーナーとして、性別による仔馬の価格差をもう少し小さくしたい」と考えるスウィーニィ氏は、それを実現するためのアイデアを、声を大にして語る。

「(海外に比べて)日本は、牝馬だけのレースがちょっと少ないと思います。それも、牝馬限定の重賞レースが少ないですよね。そこで考えたのは、牝馬限定の重賞レースをもっと増やすべきではないか、ということ。そうすれば、牝馬が活躍できるチャンスが自然と増して、今よりも牝馬を購入しようという、馬主さんが増えていくと思うんです」

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