【競馬】日本競馬の発展を願う「外国人牧場長からの提言」 (2ページ目)

  • 河合力●文 text by Kawai Chikara
  • photo by Getty Images

 ヨーロッパの競馬は、もともと貴族の娯楽として発展してきた背景がある。そのため、競馬や馬主のステータスは非常に高く、競馬場に集うファンの姿を見ても、タキシードやハットなどのハイファッションに身を包んだ人々が多く見られる。競馬そのもののステータスが日本より高いのは明らかで、スウィーニィ氏は「その差を少しでも小さくすべき」と指摘している。

 スウィーニィ氏が、競馬や馬主のステータス向上を願うのは、日本社会特有の、競馬を"賭け事"ととらえているムードをできる限り払拭したい、という思いがまずある。さらに、競馬や馬主のステータスが上がれば、競馬への関心が一層高まり、競馬の根本を支える馬主になりたいという人も増えてくるのではないか、という思惑がある。

 では、どのようにして馬主のステータスを上げ、馬主になりたい人を増やすべきなのか。その方法として、スウィーニィ氏はあるアイデアを提案する。

「現在日本では、GIレースにならないと、馬主や関係者がレース前のパドックに入ることはできません。でも日本の競馬場は、どこもパドックが広いのですから、GI以外のレースでも馬主や関係者が入れるようにすればいいと思うんです。そうすれば、馬主は家族や友人、恋人などをいつでも連れてこられますから、自分の馬を紹介しやすくなるでしょう。こういったことが、馬主にとって『馬を持つ誇り』につながると思うんです」

 レース前のパドックには、GIレースに限り、馬主や関係者の入場が許されている。そこでは記念撮影をする姿を見かけることも多いが、GIレースだけだと一部の人間に限られてしまう。しかし、もしGI以外のレースでもそうしたことが行なえるようになれば、多くの馬主に楽しみや優越感を与えることができ、馬主の存在やその価値も上がるのではないか、とスウィーニィ氏は考えている。

「アイデアは他にもあります。毎年、JRAでは馬主のランキングが発表されていますが、これをもっとアレンジして、個人馬主部門や新人馬主部門などを作るのはどうでしょうか。そうすれば、もっといろいろな人が脚光を浴びるはずです。そのうえで、そういった人たちを表彰する機会を作ることも、馬主のステータス向上につながるかもしれません」

 競走馬やジョッキー、調教師に比べて、その馬のオーナーが脚光を浴びることは決して多くない。しかし、彼らがスポットライトを浴びる機会を増やさないと、馬主に憧れを持つ人は増えてこないと、スウィーニィ氏は言う。

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