【競馬】有馬の主役。エピファネイアを蘇らせた「真夏の修行」 (3ページ目)

  • 河合力●文 text by Kawai Chikara

 エピファネイアと言えば、レースではガツンとかかってしまい、騎手が懸命に手綱を引っ張る姿が思い出される。昨年の日本ダービーでも、引っかかって前の馬と絡んでしまい、危うく転倒しそうになったほど。そういった「気の強さ」を持つエピファネイアだからこそ、この夏のトレーニングでは、精神面にも気を配った。森下氏が語る。

「とにかく、エピファネイアは気の強い馬で、調教でも乗り手に抵抗してくることがあります。そういう気性ですから、ハードな調教によって馬自身がカッとなってしまう可能性もありました。ですから、調教で騎乗したスタッフたちは、『何とかテンションを上げないよう、気をつけて乗ろう』と丁寧にやっていましたね。馬の気持ちに注意しながら、速いタイムを出していったんです」

 スタッフたちの気遣いもあって、エピファネイアは変にテンションを上げることなく、夏の猛トレーニングを存分に消化。無事に“修行”を終えると、その馬体は一段とたくましさを増していた。優秀なスタッフによって、まさに体を作り直すことができたのだ。

 こうしてエピファネイアは、再びGI戦線に乗りこむこととなった。

 春以来の復帰戦となったのは、GI天皇賞・秋(11月2日/東京・芝2000m)。トレーニングの成果を見せるべき舞台だったが、エピファネイアはレースで終始引っかかり、6着に敗れてしまった。それでも森下氏は、「折り合いさえつけば、必ずエピファネイアの力を見せられる」と信じたという。
 
 そして、迎えたジャパンカップ。これまで主戦を務めた福永祐一騎手がジャスタウェイに騎乗することになったため、同馬はクリストフ・スミヨン騎手(フランス)とコンビを組むことになった。スミヨン騎手と言えば、ヨーロッパのトップジョッキーである。エピファネイアは、名手のエスコートによって、これまでとは違った姿を見せるのだった。森下氏がジャパンカップを振り返る。

「ジャパンカップでは、2コーナーでエピファネイアが引っかかりそうになったんですけど、そこでうまく騎手が抑えてくれたんですよね。走るフォームを見ても、力みが抜けていました。4コーナーを回ってくるときは、『これなら勝てる』と思いましたよ」

 直線で抜け出したエピファネイアは、近走のうっ憤を晴らすかのように後続を突き放した。豪華メンバーを相手に、終わってみれば4馬身差の圧勝。その走りは、明らかに進化を遂げていた。

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