【競馬】香港国際競走で見えたアジア競馬の成長ぶり

  • 土屋真光●文・写真 text & photo by Tsuchiya Masamitsu

 昨年、過去最多の招待馬を集めたと前述したが、その状況下で地元香港勢は香港スプリント以外の3競走を勝ってしまったのだ。とりわけ、香港では1シーズンで4競走ほどしか行なわれておらず、あまり力を入れられていないと思われていた2400mのヴァーズを香港調教馬に勝たれてしまったことは、ヨーロッパなどの「プレミア級のGI ではちょっと足りないグローブトロッター(自由に旅する)」馬にとっての草刈り場だったイメージを一変させた。また、香港カップは3連勝中、香港マイルは8連勝中と、このカテゴリでの地元勢の強さは際立っていることもあって、ヨーロッパなどの高いレーティングの馬が軒並み回避し、その分が日本に回ってきた、というものだ。
 
 一方の日本勢は、日本国内GI馬はグランプリボスとスノードラゴンの2頭のみで、オーストラリアで勝利したハナズゴール(牝5・父オレハマッテルゼ/加藤和宏厩舎)を含めてもGI馬3頭という陣容。例えば今年のドバイワールドカップデーに遠征した日本調教馬が8頭でうち5頭がGI勝ち馬だったことと比較すると、香港勢の強さとアウェーの不利も考えあわせると、今年は苦戦を強いられそうという見方が強かった。事実、9頭のうち単勝オッズが10倍を切ったのは香港マイルで9.7倍だったフィエロ(牡5・父ディープインパクト/藤原英昭厩舎)のみという、比較的日本びいきなはずの香港の競馬ファンの評価が如実にそれを物語っていた。

 そう考えると、今回の3着2頭を含む入着4頭というのは、大健闘とは言えないまでも、日本調教馬の一応の存在感は示せたのではないだろうか。
 
 口火を切ったのは、香港ヴァーズのカレンミロティック(せん6・父ハーツクライ/平田修厩舎)だった。宝塚記念からの休み明けぶっつけ、GI連対もその宝塚記念のみということもあって、11頭中7番人気。道中は4番手の外めを追走し、3コーナーから徐々に前に接近して、直線を向くところでは一旦は先頭に並ぶ勢いを見せた。そこからはこのレースの特徴でもある後半の伸び勝負になり、フランスのフリントシャー(牡4、A.ファーブル厩舎)らの底力に屈したが、それでもずるずる下がることなく5着に粘った。惜しむらくは、後半が早くなることが判っていながらスローペース追走に甘んじ、平均ペースからの我慢比べが身上のこの馬向きの展開に持ち込めなかったことだが、それでも日本のファンの期待以上の結果を残すことができた。
 
 一方、大外一気で勝利したフリントシャーは、さすがの実績馬。昨年の一時期は凱旋門賞の有力候補となり、今年はその凱旋門賞で2着となった。続くブリーダーズカップターフでも2着と歯がゆい内容が続いていたが、必勝体勢で臨んだ今回は、力の違いを見せる鮮やかな勝利だった。

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