【競馬】外国人牧場長が激白。目指すは「タービー3勝」

  • 河合力●文 text&photo by Kawai Chikara

『パカパカファーム』成功の舞台裏
連載●第43回

2001年の開場から13年、パカパカファームは着実にステップアップしてきた。2012年には生産馬のディープブリランテが日本ダービーを制覇。さらにその後もコンスタントに有力馬を輩出し、20頭そこそこの繁殖牝馬しかいない小牧場としては大成功を収めている。それでも、代表のハリー・スウィーニィ氏は、「成功してはいない」と言う。はたして、牧場にとっての"成功"とは何なのか、そしてスウィーニィ氏が求めるモノとは――。

生産頭数を増やして、少しずつ規模を拡大しているパカパカファーム。生産頭数を増やして、少しずつ規模を拡大しているパカパカファーム。 競走馬に携わる人たちが最大の目標とする、日本ダービーのタイトル。アイルランドから日本に渡り、パカパカファームを開場したハリー・スウィーニィ氏は、2012年にその栄冠を手にした。2001年の開場からわずか11年、生産馬ディープブリランテによってその快挙は成し遂げられた。

 ディープブリランテがダービーを勝ったあとは、これまでと比べ物にならないほどパカパカファームの知名度は上がった。セリ市などにおける仔馬の注目度も、格段に高まったという。まさにそれこそが、ダービー勝利の効果だった。

 しかし、この状況でもスウィーニィ氏は、「まだ牧場として、『成功した』とは言えない」と険しい表情を見せる。「ダービー馬が1頭出ただけでは、10年後も牧場が好調かどうかはわからないから」というのがその理由だ。そして彼は、牧場の成功ラインとして、こんな考えを披露した。

「できれば、ダービーを3回、勝ちたいです。ブリランテで1度勝ったので、あと2回ですね。もちろん、それはすごく難しいこと。でもそのくらいできないと、本当の意味でパカパカファームのブランドは確立されません。私はこれからもずっと日本で牧場をやるつもりなので、とにかく死ぬまでにダービーを3勝したい。そこまでできれば、牧場として『成功した』と言えます」

 近年、馬産地からは、名門牧場の閉鎖のニュースが相次いで報じられている。メジロ牧場(三冠牝馬のメジロラモーヌや、GI5勝のメジロドーベルなどを輩出)や、カントリー牧場(2002年のダービー馬タニノギムレットや、ダービーを含めてGI7勝を挙げたウオッカを輩出)などが、その最たる例だろう。一時代を築き、栄華を誇った大牧場でさえも、決して安泰とは言えない現実があるのだ。

 そのような背景も踏まえて、スウィーニィ氏は「ダービー3勝」という成功ラインを掲げたのだった。

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