【競馬】エリザベス女王杯、歴史からひも解く「穴馬5頭」

  • 河合力●文 text by Kawai Chikara
  • photo by Nikkan sports

 エリザベス女王杯の歴史をひも解くと、古馬にも伏兵ながら勝利を収めた馬がいる。近年では、2012年のレインボーダリア(牝/父ブライアンズタイム)と、2009年のクィーンスプマンテ(牝/父ジャングルポケット)がそうだ。2頭は重賞さえ勝っていない立場だったが、この舞台における“適性”が勝利をあと押しした。

 その証拠に、レインボーダリアは、まだ条件クラスの身で挑戦した2011年のエリザベス女王杯でも、17番人気ながら5着と好走。本格化前からすでにこの舞台での適性を見せていたのだ。

 一方のクィーンスプマンテは、「大逃げ」の戦法がまんまとハマッての大金星。勝因はそれによるところも大きいが、この馬には確かな「距離への適性」もあった。というのも、牝馬限定レースのほとんどが2000m以下で行なわれている中、2走前のみなみ北海道S(札幌・芝2600m)で牡馬相手に勝利していた。この長丁場で、牡馬とのハードな戦いを制した経験が、牝馬限定レースとしては長い2200mで、しかもGI戦ゆえにタフな競馬になりやすいエリザベス女王杯で生かされた。

 今年の出走馬を「適性」から眺めると、ラキシス(牝4歳/父ディープインパクト)とアロマティコ(牝5歳/キングカメハメハ)が、面白い存在。2頭はともに重賞勝ちこそないものの、昨年のエリザベス女王杯でラキシスが2着、アロマティコが3着と健闘している。特にラキシスは、当時まだ下級クラスの身でありながら2着に食い込んだ。この舞台への適性が高いのは明らかだ。

 さらに、2頭とも前走は、牡馬相手のGIIオールカマー(9月28日/新潟・芝2200m)に出走。どちらも勝ち馬からコンマ1秒の接戦を演じ、ラキシスは2着、アロマティコは5着と好走している。同距離で行なわれるエリザベス女王杯に向けて、万全の態勢と言えるだろう。

 最後にもう一頭、加えておきたい馬がいる。下級クラスを連勝してきたグレイスフラワー(牝5歳/父ダイワメジャー)だ。

 前走のオクトーバーS(10月11日/東京・芝2400m)では、2400m戦を牡馬相手に快勝。2200mのハードな戦いには不安がなく、いきなりのGI挑戦でも楽しみのほうが大きい。第一、先述のラキシスを含めて、近年のエリザベス女王杯では、下級クラスの長距離戦で快勝した馬が、そのまま通用するケースが目立っている。グレイスフラワーの一発があってもおかしくない。

 先の天皇賞・秋(11月2日/東京・芝2000m)で2着と奮闘したジェンティルドンナ(牝5歳)や、ハープスターといった超一線級のタレントは欠くものの、今年も「女王決定戦」という名に恥じないだけの、粒ぞろいのメンバーがそろったエリザベス女王杯。頂点に立つのは、若さあふれる3歳馬か、歴戦の古馬か、熾烈な戦いから目が離せない。

3 / 3

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る