【競馬】秋華賞、レーヴデトワールが偉大な姉の無念を晴らす (2ページ目)

  • 新山藍朗●文 text by Niiyama Airo
  • photo by Nikkan sports

 実際、関西の競馬専門紙トラックマンによれば、姉と同じDNAの持ち主であることを感じさせる場面があったという。

「松田博資厩舎の現3歳世代は素質馬ぞろいですが、なかでもレーヴデトワールは、デビュー前から調教の動きが際立っていました。その走りは、確かに姉(レーヴディソール)を思い起こさせるものがありました」

 そうは言っても、姉レーヴディソールは「10年に一頭」と言われた逸材。その姉と比べるのは、酷というものだった。

 レーヴデトワールは、デビュー戦こそ、姉を彷彿とさせる差し脚を見せて勝利したが、2戦目には早くも土がついて、姉が勝った阪神JFには駒を進めたものの、9着と惨敗した。3歳のクラシック戦線でも力及ばず、桜花賞は5着。オークス(東京・芝2400m)には出走することさえできなかった。

 周囲の評価も、阪神JFのときはまだ3番人気に推されていたが、桜花賞では7番人気まで下降。その段階ですでに、レーヴデトワールは「偉大な姉とは違う」と、多くのファンが見限っていた感がある。そして、桜花賞以降も凡走を重ねた結果、彼女は「期待はずれ」のレッテルを貼られてしまった。秋初戦の紫苑Sでさしたるメンバーがいない中、5番人気にとどまったのが、その証拠と言えるだろう。

「賢兄愚弟」ならぬ「賢姉愚妹」と言えばいいのか。あまりにも優れた姉を持ったゆえの、妹の悲哀である。けれどもこの妹、レーヴデトワールは実はそれほど「愚妹」ではなかった。下降線をたどる評価を横目に、夏の休養期間中に「なにくそ」とばかりに、確実に自力を強化していたのだ。

 迎えた紫苑S。当日の芝コースは、極悪の不良馬場だった。引っかかる気性で、そもそも2000mという距離には不安があったうえ、切れ味勝負の同馬にとって、その悪条件は大きなマイナスだった。しかも、2カ月半の休養明けながら、馬体は10kg減。ただでさえ「期待はずれ」の評価が増す中、不安要素がこれだけそろえば、人気が得られないのは当然のことだったのかもしれない。

 だが、レーヴデトワールはそうした"逆風"を見事にはね返した。道中、好位につけて追走すると、直線では2着ショウナンパンドラ(牝3歳)との壮絶な叩き合いを制した。それまでの走りとはひと味違って、ある種の奥深さを感じさせる競馬で勝ったのである。前述のトラックマンが言う。

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