【競馬】毎日王冠、厩舎に勢いある3歳馬が波乱を起こす (2ページ目)
他にも有力馬が目白押しですが、特に気になるのは、ワールドエースと同じディープインパクト産駒のスピルバーグ(牡5歳)です。この馬も脚部の不安を抱えて、なかなか順調に使えないところがあるようですが、凄まじい決め手を持っています。そんな、父を彷彿とさせるような末脚を生かすうえでも、開幕週の東京という舞台はぴったりでしょう。
夏を越して、さらなる成長が見込めるウインマーレライ。 さて、このレースの「ヒモ穴馬」には、古馬に勝負を挑む3歳馬のウインマーレライ(牡3歳)を取り上げたいと思います。
昨年の6月にデビューし、早々に2勝を挙げた同馬は、そのままクラシック戦線に乗っていくのかと思っていました。しかし、その後の重賞やオープン戦では見せ場を作るものの、まだ力不足といった感じのレースが続いて敗戦を重ねました。そして、日本ダービーへの最終切符をかけた青葉賞(5月3日/東京・芝2400m)にも出走しましたが、8着と馬群に沈みました。
ただ、同レースでは「今までのウインマーレライとは少し違うぞ」と思えるところがありました。というのは、1番人気のワールドインパクト(2着)が横綱相撲の競馬をする中で、果敢に同馬を負かしにいくという、力勝負に挑んでいったのです。
結果的には、終(しま)いが甘くなってしまいましたが、そういう競馬にチャレンジしたことが、この馬の成長をうながすきっかけになったのではないでしょうか。実際、次走のラジオNIKKEI賞(7月6日/福島・芝1800m)では、まさにその成長をうかがわせる走りを見せてくれました。速いペースを難なく追走し、終いの脚も最後まで衰えることなく、ひと皮むけた内容で勝利を飾りましたね。
確かにメンバーのレベルを考えれば、今回は前走に比べてはるかに高くなります。経験豊富な古馬が相手というのも、かなり厳しい条件です。それでも、ウインマーレライはまだまだ伸びしろがある3歳馬。夏を越して、さらに成長している可能性は十分にあります。
加えて、同馬を管理する高木登厩舎は勢いがあります。今年の毎日杯(3月29日/阪神・芝1800m)で重賞初制覇を果たすと(マイネルフロスト/牡3歳)、前述のとおりウインマーレライでラジオNIKKEI賞を制し、先週のスプリンターズS(10月5日/新潟・芝1200m)では、ついにGI勝利まで成し遂げたのです(スノードラゴン/牡6歳)。
勝ち鞍が伸びたり、重賞を勝ったりすると、調教師はもちろんのこと、厩舎スタッフの士気も一気に高まります。厩舎全体のムードがよくなると、すべてが好転して、一層の成績アップにつながることはよくあります。この厩舎の勢いは侮れません。ウインマーレライが驚くような快走を見せても、不思議ではないと思いますよ。
プロフィール
大西直宏 (おおにし・なおひろ)
1961年9月14日生まれ。東京都出身。1980年に騎手デビュー。1997年にはサニーブライアンで皐月賞と日本ダービーの二冠を達成した。2006年、騎手生活に幕を閉じ、現在は馬券を買う立場から「元騎手」として競馬を見て創造するターフ・メディア・クリエイターとして活躍中。育成牧場『N.Oレーシングステーブル』の代表も務め、クラシック好走馬を送り出した。
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