【競馬】外側から見た、日本馬の凱旋門賞制覇の可能性

  • 土屋真光●取材・文 text by Tsuchiya Masamitsu
  • 千葉 茂、日刊スポーツ●photo by Chiba Shigeru、Nikkan sports

 一方でハープスターに利あり、と見るのはフランスの女性記者イサベル・マシュー氏だ。
「彼女の走りには2歳の頃から目を奪われています。末脚は間違いなく世界トップクラスだと思っていましたが、札幌記念ではもう1段階成長したレース振りを見せました。このレースの3歳牝馬の優位性は今さら説明もいりませんし、さらに上積みも見込めます」

 しかし、3歳牝馬の脅威はハープスターに限らない。ロバーツ氏、マシュー氏ともにタグルーダを日本勢の最大のライバルと推す。

「今年はシーザムーンかタグルーダの年だと思っていました。しかし、シーザムーンは残念ながら引退。必然的にタグルーダに『運』が向いたといえます」(ロバーツ氏)

「キングジョージ6世&クイーンエリザベスS(英G1芝約2400メートル3歳以上)の勝ち方が素晴らしかったし、その時点で凱旋門賞を次の最大の目標としていました。前走の敗因は明らかですから、そこから立ち直ってくることに期待しています。このほか、アヴニールセルタン(牝3歳/フランス)、アイヴァンホー(牡4歳/ドイツ)、チキータ、(牝4歳/アイルランド)、そしてキングストンヒル(牡3歳/イギリス)も強力だと思います」(マシュー氏)

 タグルーダはイギリスのジョン・ゴスデン厩舎の3歳牝馬で、2009年の凱旋門賞馬シーザスターズの初年度産駒の1頭。無敗のまま英国オークスを制し、続くキングジョージ6世&クイーンエリザベスSでは歴戦の古馬を相手に38年ぶりとなる3歳牝馬による制覇を成し遂げた。その次のヨークシャーオークス(英G1芝約2400メートル3歳以上牝)では同じ3歳牝馬のタペストリーの末脚に屈したが、発情の兆候があったことがレース後に明らかになっている。前売りオッズの1番人気もうなずけるところ。

 ただ、そのタグルーダも、実は英国以外ではレースに出走したことがない。その点では日本の3頭とも条件は同じだ。

「今年の凱旋門賞は有力馬が一長一短で、非常にオープン。どの馬にもチャンスがあります。それだけに日本の強力な3頭にとっても大きなチャンスでしょう」(マシュー氏)

 一筋縄にはいかないのは最初から判っていたこと。だが、力さえ出し切れれば悲願達成は向こうから近づいてくる。これまで多くの日本馬の挑戦を跳ね除けた固く閉ざされた扉を蹴り破るのはどの馬だ。

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