【競馬】生産者が異論を唱えたダービー馬の無謀な挑戦 (2ページ目)

  • 河合力●文 text by Kawai Chikara
  • photo by Getty Images

 アスコット競馬場は、コースの高低差が約20mもあるヨーロッパ屈指のタフなコース。また、芝も日本より深く重い。つまり、ダービーとはケタ違いのスタミナが必要であり、折り合いを欠いて体力をロスすることは命取りになる。だからこそスウィーニィ氏は、ディープブリランテを管理する矢作芳人調教師に、「私は反対です」と主張したという。

 アイルランドから日本に渡り、牧場を開いたスウィーニィ氏。その異国の地で生まれたダービー馬が、昔から馴染みのあるヨーロッパのGIに出走する。それはまさに夢のような話だが、そのときの彼は、そんな感慨に浸ることはなかったそうだ。

 ともあれ、スウィーニィ氏がディープブリランテのローテーションを決めるわけではない。同馬は予定どおり、キングジョージの出走馬に名を連ねた。スウィーニィ氏も「出るからには、もちろん全力で応援しました」というが、待っていた結果は、やはり厳しいものとなった。

キングジョージ6世&クイーンエリザベスSでは馬群に沈んだディープブリランテ(左から2頭目の赤い帽子)。キングジョージ6世&クイーンエリザベスSでは馬群に沈んだディープブリランテ(左から2頭目の赤い帽子)。 まずまずのスタートを切ったディープブリランテ。出足もリラックスしていたが、前に馬を置く形をなかなか作れずにいると、徐々にエキサイトし始めたのだ。レース中盤では完全にかかってしまい、懸命になだめる鞍上の岩田康誠騎手の制御もきかなかった。その消耗が激しく、直線に向くと次第に後退。見せ場を作ることさえできず、8着に敗れた。

 デビュー以来、すべてのレースで3着以内をキープしてきたダービー馬。キングジョージは、生まれて初めて大敗を喫した舞台となった。

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