【競馬】小牧場を劇的に変えたダービー制覇の余波 (3ページ目)

  • 河合力●文 text&photo by Kawai Chikara

 また、歓喜のときから約1カ月半後、2012年の7月9日、10日には、競走馬のセリ市「セレクトセール」が開催され、パカパカファームの馬にも注目が集まるようになった。とりわけ、ディープブリランテの全妹となる当歳(0歳)馬は、目玉とも言える存在として脚光を浴びた。そして、のちにパピーラヴと名付けられ、今年デビューを控えるこの馬には、その年の当歳牝馬で最高額となる、1億4500万円の高値がつけられたのだ(ちなみに、ディープブリランテの落札額は3100万円だった)。

 牧場のスタッフによれば、「このときのセリ市における(パカパカファームへの)注目度は、これまでとは別物だった」という。そして、同スタッフはこう続けた。

「ウチに生産馬を見に来る人が、かなり増えました。加えて、デビュー前の仔馬を預けたいという声も格段に多くなりましたね」

 それは、パカパカファームの環境のよさ、競走馬の管理が認められた証でもあった。

 ディープブリランテのダービー制覇。それによって、スウィーニィ氏の求め続けてきた「ブランド作り」が、急速に進んだことは間違いない。

 さて、ダービーを勝ったディープブリランテはその後、イギリスのGIキングジョージ6世&クイーンエリザベスS(8着。アスコット・芝2400m)に挑戦。そしてそのレースを最後に、惜しくも引退することとなる。次回は、ディープブリランテの引退と、当時のスウィーニィ氏の思いに迫る。

(つづく)

  ハリー・スウィーニィ

1961年、アイルランド生まれ。獣医師としてヨーロッパの牧場や厩舎で働くと、1990年に来日。『大樹ファーム』の場長、『待兼牧場』の総支配人を歴任。その後、2001年に『パカパカファーム』を設立。2012年には生産馬のディープブリランテが日本ダービーを制した。
『パカパカファーム』facebook>

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