【競馬】女傑トゥザヴィクトリーの娘は大牧場「期待の星」

  • 河合力●文 text by Kawai Chikara

 育成を手掛けたノーザンファーム早来(はやきた)の日下和博氏は、「その動きは血統や価格に見合ったもの。あるいは、それ以上の大物感を感じました」と素質を称える。

「まだ1歳だった昨秋の時点で、すごくいい馬でした。ストライドなども申し分なく、素晴らしい乗り味でしたね。同じ年に生まれた馬の中でも、ひと際目立つ存在でしたよ。この夏には随分とたくましくなって、こちらを出るときには471kgほどの馬体重になりました」

 同馬がノーザンファーム早来を離れたのは、7月11日のこと。ここからは栗東・角居勝彦調教師にバトンタッチし、函館競馬場で調整を積んだ。7月20日には、同じく角居調教師の管理する重賞勝ち馬ディアデラマドレ(牝4歳)と追い切りを実施。実力馬の胸を借りた調教こそ、陣営の期待の表れだろう。

 気がかりがあるとすれば、トーセンビクトリーが牝馬だということ。同じ父を持つ兄は活躍したが、先述のディナシーやトゥザレジェンド(牝4歳/キングカメハメハ)など、"姉"になると実績を築けていない。

 だが日下氏は、「この血統の牝馬はまだ活躍できていませんが、トーセンビクトリーはとにかくいい馬ですから。姉は手掛けていないものの、姿は見ています。それに比べるとかなり順調な印象です」と、不安は感じていない。そして力強く、将来の展望を口にする。

「大きいレースを狙える逸材だと思っているので、相手もありますが、デビュー戦はすんなり突破してほしいところ。父も母も東京の芝2400mで力を見せましたし、この馬もベストは東京の芝2400mだと感じています。何とか無事に、オークスの舞台へ行ってもらいたいですね」

 父キングカメハメハは、2004年の日本ダービー(東京・芝2400m)を制した。兄2頭も2000m以上の距離で力を見せていることから、目指すはやはりオークス。そして、同舞台でハナ差2着と涙をのんだ母の雪辱である。そんな大目標を見据えて、トーセンビクトリーが競走馬としての第一歩をいよいよ踏み出す。

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