2014.06.15

【競馬】ダービー発走直後、愛馬の「異変」を感じた生産者

  • 河合力●文 text by Kawai Chikara
  • JRA●写真

 ダービー当日の東京競馬場には、パカパカファームのスタッフが多数駆けつけた。代表のハリー・スウィーニィ氏はもちろん、場長のミック・ブックリー氏や、当時海外から来ていた研修生たちの姿もあった。

 そして、本来ならば足を運べなかったはずの、フォーリングマネージャー(生産担当)の伊藤貴弘氏も決戦の舞台に訪れた。一頭だけ残っていた繁殖牝馬の出産が、奇跡的に予定よりも早まったおかげだった。

 伊藤氏がこの場に来られたことは、まさに「幸運」。それだけでも縁起のよさを感じるには十分だったが、スウィーニィ氏によれば、他にもディープブリランテの激走を予感させる出来事があったという。

「毎年ダービーの前には、JRAが記念のネクタイを制作し、関係者に贈られます。2012年のネクタイは赤色のもの。これは偶然にも、パカパカファームのカラーでした(笑)。それともうひとつ、私はポーカーが好きなのですが、ダービー前夜にひとりで、何気なくカードを5枚引いてみると、なんと最高の役である"ロイヤル・ストレート・フラッシュ"が出たんです。あれには、ビックリしましたね。ディープブリランテに運が向いていると感じましたよ」

 不思議な偶然から感じたディープブリランテの勝算。そのうえで、パドックに現れた同馬の姿を見て、スウィーニィ氏の期待はますます高まったという。

「ディープブリランテは5月8日の遅生まれですから、皐月賞から日本ダービーの約1カ月半でグンッと成長しているように感じました。早く生まれた馬との差がどんどんなくなって、間違いなく調子はいいと思いましたね」

 隣で見ていた伊藤氏も、ディープブリランテの出来には太鼓判を押した。

「馬体を見て、体調はまったく問題ないと思いました。矢作先生(※ディープブリランテを管理する矢作芳人調教師)も近くにいましたが、『これ以上の仕上げはできない』と言っていましたからね」

 ディープブリランテの状態面には何の不安もない。ダービーに挑む態勢は整ったと言える。それは管理する矢作厩舎のスタッフも、生産者のパカパカファームも同じ思いを抱いていた。