【競馬】なぜ今、強い牝馬が続出しているのか

  • text by Sportiva

――嶋田さんが騎乗された馬の中で、牡馬相手にも互角に戦えた馬はいましたか。

嶋田 さっき名前を挙げた、テンモンかな。オークスのあと、残念ながら“エビ(屈腱炎の通称)”になって引退してしまったけど、無事だったら、古馬になってからも牡馬と互角に戦えたと思う。天皇賞や有馬記念でも、いい勝負ができたんじゃないかな。実際、朝日杯3歳S(現朝日杯フューチュリティS)や京成杯では、牡馬相手に勝っているしね。特に朝日杯では豪快な差し切り勝ちを決めて、「これは、ちょっとモノが違うな」と思ったもんだよ。

――ところで、嶋田さんが牝馬に騎乗するうえで、気を使っていたことはありましたか。

嶋田 牡馬も含めてだけど、馬も人間と一緒で、一頭一頭、違った個性がある。だから、馬の個性をつかんで、それに合わせた調教をしたり、個性に合ったレースを選んだりするのが、その馬に関わる人間の仕事。それは、牡馬も牝馬も一緒で、同じように気を使っていた。

 馬を扱ううえでは、普段から自由の中にも厳しさを持って接していた。たとえ普段はわがままな馬でも、それをレースに出させないようにしていた。もちろん、あまりしつこく叱ってばかりいると気持ちが萎えてしまう馬もいたから、その辺の扱いには気を使ったよ。要は、レースで全能力を引き出せればいいわけ。そのために必要なことを、牡馬、牝馬にかかわらず、一頭一頭に注いでいった。

 まあでも、牡馬と比べたら、牝馬のほうが芯の強さがある馬が多かったかな。例えば、トウコウエルザ。1974年のオークスの勝ち馬なんだけど、その精神力には感服させられたよ。最後の直線で苦しくなっても、なお頑張ってもうひと伸びしてくれた。あの勝負根性は素晴らしかったね。

――さて、5月18日にはヴィクトリアマイルが開催されます。嶋田さんが注目している馬を教えてください。

嶋田 ホエールキャプチャ(牝6歳)だね。牝馬特有の切れがあるし、どこからでも競馬ができる器用な脚もある。昨年はヴィルシーナに競り負けて(2着)、連覇は果たせなかったけれども、いまだその実力に衰えは感じられない。今年も勝つチャンスは十分にあると思う。

嶋田 功(しまだ・いさお)

1945年11月8日生まれ。北海道出身。初騎乗は1964年3月1日。1972年~1974年にかけて、オークス3連覇の偉業を達成。その後も、1976年、1981年のオークスを制覇。オークス通算5勝を含め、牝馬限定GI通算7勝を挙げて、「牝馬の嶋田」「オークス男」などの異名をとった。また、ハイセイコーを退けてダービー(1973年)制覇を果たしたタケホープの鞍上としても知られる。1988年、騎手引退して翌年からは調教師として活躍。アクアビット(1989年ニュージーランドT)やワカタイショウ(1990年中山大障害・秋)などの重賞勝ち馬を育てたが、2012年に定年を待たずに勇退した。

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