【競馬】なぜ今、強い牝馬が続出しているのか (2ページ目)

  • text by Sportiva

――例えば、かつては牡馬と牝馬では調教や育て方が違ったけれども、最近は調教のレベルも上がって、牡馬も牝馬も同じようなトレーニングができるようになり、"牝馬が強くなった"ということはないですか。

嶋田 確かに調教技術は昔よりも間違いなく上がっている。でも、それによって牝馬が活躍するようになった、ということもない。私が調教師のときもそうだったけど、調教は馬の個性に合わせてやるもの。牝馬だから、牡馬だから、という違いはない。第一、昔も調教では牡馬顔負けの牝馬がいたし、例えばテンモン(1981年のオークス馬)なんか、調教をやればやるだけ動いた。レースでも走ったけど、調教で牡馬と併せても、見劣りしなかったよ。

 そうは言っても、関係者の意識が変わってきた、ことが(強い牝馬が続出している)ひとつの要因になっている可能性はある。というのは、昔に比べると"無駄使い"をしなくなった。つまり、どの厩舎もある程度早い段階で馬の特性や能力を見極めて、どこのレースを使うのか、しっかりと狙いを定めている。そのため、早々に牡馬とやっても互角に戦えるとわかれば、目標のレースに向けてしっかり仕上げるようになってきた。そうやって入念な準備するようになったから、牡馬一線級相手にも結果を出せる牝馬が増えてきているのかもしれないね。

――牝馬は体調管理が難しいと聞きます。その辺で楽になったことはありませんか。

嶋田 それはあるだろうね。例えば、フケ(牝馬の発情)。今はホルモン剤の入った注射を打って、コントロールできるようになった。おかげで、年間を通して、安定した力が出せるようになった、というのはあると思う。

――そうした要因があって、ウオッカなど、牡馬一線級相手でも勝てる馬が増えてきたわけですね。

嶋田 それもあるだろうけど、ウオッカの場合は、先天的な能力が他の馬とは違っていたんだろうね。個人的な意見だけれども、この(血統)配合(父タニノギムレット、母タニノシスター)を決めた生産者、そして生産した牧場がすごいと思う。馬産というのは時間もお金もかかるものだけど、手間ひまと資金をかけたからこそ、ウオッカのような馬が誕生したんだと思う。現代にはそういう環境があって、他にもいい配合の馬がたくさんいる。それが、牝馬として誕生すれば、その馬が牡馬相手に結果を出しても不思議はないんじゃないかな。

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