【競馬】キズナ、天皇賞制覇へ。佐々木調教師の「揺るがぬ自信」

  • 土屋真光●文 text by Tsuchiya Masamitsu
  • JRA●写真

 キズナを語るうえで“勇気ある撤退”というのは、欠かせないキーワードである。

 3歳春、早くからクラシック候補と呼ばれながら、弥生賞(2013年3月3日/中山・芝2000m)で5着に敗れたのを機に、三冠初戦の皐月賞回避を決断。早々に標準をダービーに定めて、毎日杯(2013年3月23日/阪神・芝1800m)、京都新聞杯(2013年5月4日/京都・芝2200m)に駒を進め、見事連勝してダービーに向かったのだ。

 そうして得た“ダービー馬”の称号だからこそ、佐々木調教師は強い矜持(きょうじ)を持つ。それゆえの「全勝宣言」でもある。

「(キズナは)ダービー馬であって、昨年の最優秀3歳牡馬。だから、いくら休み明けとはいえ、大阪杯で2番人気だったのいうのは、ちょっと失礼じゃないかと思いましたね」

 決して過信ではなく、佐々木調教師には確固たる自信があるのだ。キズナに関しては、「不安がまったくなく、レースを迎えられるのが楽しい」とまで言う。

「これまで、タップダンスシチー(GI2勝=2003年ジャパンカップ、2004年宝塚記念)やアーネストリー(GI1勝=2011年宝塚記念)など、どの馬も完璧な状態でレースに臨んでも、どこかしら、不安に思う気持ちや、気負うところがありました。ですが、今のキズナにはまったくそういうものがないし、(レースを迎えても)緊張しない。実際にレースでも思ったとおりに走ってくれるのを見ていて、むしろ僕自身があの馬(キズナ)のファンになっているくらいです。こういう思いをさせてくれる馬はなかなかいない、というか、初めてです。(天皇賞・春では)ゴールドシップ(牡5歳)やウインバリアシオン(牡6歳)など、とても強い相手がそろっています。それでも、不安はありません」

 佐々木調教師の視線の先には、もちろん最大のターゲットとなる凱旋門賞への再挑戦がある。だが、日本で出走するすべてのレースにおいて、そこへ向けてのステップという気は毛頭ない。今や、プライドと信頼で結ばれた愛馬“キズナ”が、難なく「盾(天皇賞の通称)獲り」を果たす姿しか思い描いていないだろう。

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