【競馬】キズナ、天皇賞制覇へ。佐々木調教師の「揺るがぬ自信」 (2ページ目)

  • 土屋真光●文 text by Tsuchiya Masamitsu
  • JRA●写真

「(凱旋門賞が行なわれた)ロンシャンのタフな馬場でも、あれだけ長く脚を使って、ズルズルと下がることなく、最後まで上位争いを演じた馬。距離がもたないわけがないと思っています」

 キズナを管理する佐々木晶三調教師は、昨年の凱旋門賞におけるレースぶりを引き合いに出して、天皇賞・春への手応えを口にした。確かに凱旋門賞では、勝ち馬トレヴ(当時、牝3歳/フランス)にこそ差をつけられたものの、オルフェーヴル(2着)よりも先に仕掛けて、同馬とは差のない4着に踏ん張った。そのレース内容は、後方から強襲したダービーとはまた違う強さを感じさせるものだった。

 さらに、大阪杯で目を見張ったのは、馬体の充実ぶりだ。馬体重は、昨年のダービー時より20kg増の498kg。それでいて、無駄な肉はほとんどなかった。ダービーからフランス遠征を経て心身ともに成長し、休養中に一段とたくましさが増したことは明らかだ。それには、佐々木調教師も大きく頷(うなず)いた。

「フランスから帰国して、ここまでの間に(キズナは)ふた回りは大きくなりました。レース直前の調教に乗った武豊騎手も『2段階、パワーアップしていますね』と言っていたので、馬体の成長がそのままパワーアップにつながっていることは間違いありません」

 そして、大阪杯でその片鱗を存分に披露。ステップレースとしては、佐々木調教師も大いに満足していると思われたが、こちらの考えていたトーンとはやや違った。大阪杯の狙いそのものが"試走"ではなかったというのだ。

「GⅡの大阪杯だからといって、トライアルとか、ひと叩きとか、そういう意識は持っていません。(レースに)出すからには、全部勝つつもり。凱旋門賞も、大阪杯も、その点では違いはないんですよ。日本ダービー馬ですから、そうでないといけない」

"ダービー馬"という称号への強いプライド――。

 ゆえに、昨年末の有馬記念(12月22日/中山・芝2500m)出走も断念した。使おうと思えば使えたが、中途半端な状態ではオルフェーヴルには絶対に勝てないと思っていたからだ。佐々木調教師が振り返る。

「(有馬記念に)出走すれば、JRAも、ファンのみなさんも喜んでくれたかもしれない。でも、そこでいい走りを見せられないようなダービー馬ならば、結果的にファンのみなさんをがっかりさせてしまいます。オルフェーヴルに勝つには、完璧な状態でないと難しいですから。それで、(レースに)出すべきではないと思って、回避を決断しました。結果的に、有馬記念を自重したことが、馬体の成長にもプラスに作用したので、決断としてはよかったと思っています」

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