【競馬】蛯名騎手が語る「激変イスラボニータに勝機あり」 (3ページ目)

  • 新山藍朗●構成 text by Niiyama Airo
  • photo by Nikkan sports

 ところで、イスラボニータの父親は、フジキセキ。種牡馬として産駒を送り出すのは、現3歳世代が最後になるが、最後にこれほどの馬を出してくるなんて、さすが「名馬」だなと思う。

 実は、フジキセキの新潟でのデビュー戦に騎乗したのは、僕だった。当時、先行絶対有利と言われた内回りの1200m戦で、致命的な出遅れをした。それでも、フジキセキはほぼ直線だけの競馬で、2着を8馬身もぶっちぎった。あの強さには、本当に驚かされた。

 そんなフジキセキの最後の産駒であるイスラボニータに、奇しくも僕が乗ることになった。そこに、何か運命的なものを感じざるを得ない。そういう意味でも、クラシックではいい結果を出したいと思っている。

 迎えるのは、まず皐月賞。

 昨年の暮れあたりには、関西馬の、なかでもトーセンスターダム(牡3歳)とトゥザワールド(牡3歳)の力が抜けていると思っていた。でも、前哨戦の弥生賞(3月9日/中山・芝2000m)で、ワンアンドオンリー(牡3歳)がトゥザワールドにハナ差まで迫ったりして、今ではそれら2頭を含めて、ずば抜けた存在はいないな、というのが率直な印象。いや、少し抜けているように見えていたけれども、他の馬も力をつけてきて、その差がなくなってきていると言ったほうがいいかもしれない。

 ゆえに、皐月賞は上位何頭かにチャンスがあって、その中にはもちろん、イスラボニータも入る。必要以上にエキサイトさせず、いかに気分よく走らせるかが重要。うまく乗ってやろうなんて思ったら、その時点で負けだ。

 また、イスラボニータはここまでの5戦、東京と新潟と、すべて左回りしか走っていない。そこで、初めての右回りをどうこなすかが、ひとつの課題になる。個人的には、十分にこなせると思っているが、こればかりはやってみないとわからない。とはいえ、いろいろなものが噛み合えば、きっといい結果が望めるはずだ。

 続くダービー(6月1日/東京・芝2400m)は、あくまでも皐月賞の結果次第。皐月賞でいい内容の競馬ができれば、夢は大きく膨らんでくる。

 なにしろ、東京コースは4戦4勝と得意の舞台。加えて、オーナーがある研究機関でDNAを調べてもらったら、イスラボニータの適距離は1800m~2400mという結果が出たというから、ますますダービーへの期待が高まる。そのためにも、まずは皐月賞でいい競馬をしたいと思う。

  蛯名正義(えびな・まさよし)
1969年3月19日生まれ。北海道出身。関東を代表するトップジョッキー。2010年にはアパパネで牝馬三冠(桜花賞、オークス、秋華賞)を達成。GI勝利数は19。4月16日現在、全国リーディング6位(29勝)。JRA通算2226勝(うち重賞111勝)。

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