【競馬】偉大なる女神・鈴木淑子が語る「心を打たれた春の3歳牝馬」 (3ページ目)

  • 河合力●構成 text by Kawai Chikara
  • photo by Nikkan sports

 それから13年後の1996年、ダイナカールの娘であるエアグルーヴが、武豊騎手を背にオークスを勝利します。ダイナカールが引退したあとは、その子どもをずっと応援していたので、このときも本当に興奮しました。

 競馬を始めた年に大好きになったダイナカール。そしてその娘のエアグルーヴ。大好きな母娘がオークスを勝つ歴史的な瞬間を見られて、つくづく競馬って素晴らしいと思いました。当時のことを振り返るだけで涙が出てきそうです(笑)。

 エアグルーヴも、引退後は繁殖牝馬として活躍馬を多数輩出。この血脈は、今や日本の競馬を支えるほどに枝葉を広げています。そして、その繁栄の「根幹」にいる馬が、ダイナカールなんですよね。

 繁殖牝馬として成功するためには、現役時代の活躍も重要。タイトルを獲得している牝馬は、期待の種牡馬と配合される可能性が高いですから。そういった意味でも、あのオークスでのダイナカールのハナ差は、本当に大きかったと思います。その後の日本競馬にも影響を与えた"革命的なハナ差"と言えるかもしれません。そのようなことからも、1983年のオークスは忘れられない一戦です。

 春のクラシックを戦った牡馬にも、もちろん思い出深い馬はたくさんいます。その中で一頭挙げるとすれば、1991年に無敗で皐月賞と日本ダービーを制したトウカイテイオーですね。

 ダイナカールとエアグルーヴが母娘でオークスを勝ったように、父と子で日本ダービーを制するという物語は、競馬ならではの壮大なロマン。1984年の三冠馬シンボリルドルフを父に持つトウカイテイオーは、まさにその偉業を成し遂げた馬でした。

 しかも、シンボリルドルフもトウカイテイオーも、無敗で日本ダービーを制したのですからすごいですよね。

 現役時代のシンボリルドルフはレースぶりが完璧で、いつも堂々とした雰囲気。その呼び名通り、「皇帝」のオーラをまとった馬でした。対して、息子のトウカイテイオーは、惚れ惚れするほどカッコいい馬。前髪がサラサラしていて、『巨人の星』に出てくる花形満のような印象でしたね(笑)。トウカイテイオーは今でも私の「ベストルッキングホース」です。

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